『ハーモニー・レッスン』無視できない、でも叫べない痛みの避雷針は”虫”

ハーモニー・レッスン(2013)
原題:Uroki garmonii
英題:Harmony Lessons

監督:エミール・バイガジン
出演:Timur Aidarbekov、Aslan Anarbayev、Mukhtar Andassov、Anelya Adilbekova etc

評価:80点


おはようございます、チェ・ブンブンです。


先日、スペースで第35回東京国際映画祭有識者会議を行った。私が一番楽しみにしているのはカザフスタンの『ライフ』である。本作は、就職した男がうっかり会社の全データを消去してしまうrm -rf /*映画ということで職業柄とても面白そうだと感じている。しかし、海外での評判は悪いらしい。有識者の済藤鉄腸さん(@GregariousGoGo)曰く、エミール・バイガジン監督のあのテンポを3時間もやったらそりゃ評判悪くなりますわとのこと。というわけで、第14回東京フィルメックスにて審査員特別賞を受賞した『ハーモニー・レッスン』を観た。確かに、このテンポで3時間地獄を描かれたら観客の精神が燃え尽きそうなレベルで恐ろしい作家であった。

『ハーモニー・レッスン』あらすじ

カザフスタンの村に暮らす13歳の少年アスランは、学校の身体測定の最中に多くの生徒たちの前で侮辱を受ける。それ以来、アスランは自分の周囲を完璧にコントロールすべきという潔癖性にとらわれるようになる。一方、学校では犯罪組織とつながりのある生徒による脅しやいじめが横行していた。アスランはそのような行為に反発するが、それは彼を更なる窮地に陥れることになる……。ブレッソンを思わせる禁欲的なスタイルが全編に貫かれ、少年期におけるモラル、暴力、等々のテーマを投げかける作品。カザフ・ニューウェーブの伝統を引き継ぎつつ、新たな領域に達した新人監督の誕生と言えるだろう。ベルリン映画祭でその撮影に対して芸術貢献賞を受賞した。

※第14回東京フィルメックスより引用

無視できない、でも叫べない痛みの避雷針は”虫”

カザフスタンのとある村。少年アスランが虚空の瞳を浮かべながら、羊を殺める場面から物語は始まる。映画は学校の日常を捉えていくが、そこには生徒の嘲笑が浮かべられ、居心地の悪い空気が流れている。一見、学校というシステムに従順なように見えて、一度先生のいない状況になると、生徒はガキ大将の指示に従い、仄暗い空間へ集められ、力関係が明示される。そして、いじめのターゲットになってしまうと、重い暴力が行使される。

本作は逃げ場のなさを表現するため、セリフは少なく、暴力が行使される場面では叫ぶことは滅多にない。重いパンチやキック、電気ショックを前に平伏すのみなのだ。これを大人も子どもも関係なく行う。厳格な絵画的構図の中に押し込められる行き場のない痛みに観ている方も心苦しくなる。ではアスランは本作において良心なのか。

我々のこのような期待は粉砕される。アスランは、ゴキブリ(?)を水責めにした後、特製の電気椅子に縛り付け、拷問をしようとするのだ。暴力は、さらなる弱者に静かに行使されていく。この拷問椅子の精巧さを観ると鳥肌が立つだろう。しかも、この電気椅子が後半に邪悪な伏線として機能しているのだ。

また、『ハーモニー・レッスン』では独りで痛みを耐えるのではなく、友人のために痛みを引き受ける場面も存在し、そこで展開される拷問がこれまたキツかったりする。2時間の作品でありながら体感時間5時間に感じる観る拷問。これが3時間になった時、我々は何を目撃することになるのか?『ライフ』を観るのが楽しみだ。