ベルイマン島にて(2021)
Bergman Island
監督:ミア・ハンセン=ラヴ
出演:ミア・ワシコウスカ、ティム・ロス、ヴィッキー・クリープス、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジョエル・スピラetc
評価:25点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『Bergman Island』を観ました。タイトル通り、スウェーデンにあるフォール島、通称「ベルイマン島」を舞台にした映画である。フォール島といえば、『仮面/ペルソナ』の撮影をきっかけにリヴ・ウルマンと住むこととなった地である。ミア・ハンセン=ラヴはオールタイムベスト映画に『ファニーとアレクサンデル』を挙げているぐらいベルイマン好きとのことですが果たして…
※2022年4月邦題『ベルイマン島にて』にて公開決定『ベルイマン島にて』あらすじ
A couple retreat to the island that inspired Ingmar Bergman to write screenplays for their upcoming films when the lines between reality and fiction start to blur.
訳:イングマール・ベルイマンにインスピレーションを与えた島に引きこもり、映画の脚本を書いていたあるカップルは、現実とフィクションの境界線が曖昧になってきます。
私とベルイマンイキリマンとの思い出
フォール島を訪れるトミー(ティム・ロス)、クリス(ヴィッキー・クリープス)。トミーはベルイマンを崇拝している一方で、クリスはベルイマンのプライベートにおけるクズさに疑問を呈している。その差が段々と広がってくる。
恐らく、ミア・ハンセン=ラヴ自身がクリス同様、作品としては好きだが人間としてはイングマール・ベルイマンを嫌っているのだろう。そして、ベルイマン崇拝者が、ベルイマン話を熱弁し安易に崇拝していることに苛立ちを隠せないのであろう。本作は、カップルの気持ちのすれ違いを女性側から描いている。それは、リヴ・ウルマンの視点からイングマール・ベルイマンを捉えようとしているようにも見える。
夫の脚本をこっそり見ると卑猥な絵が書いてあったり、同じ映画の仕事をしているのにどこか映画でマウントを取ろうとしたりする。それは男として女を影に抑圧することにも繋がっているのだ。
だが、残念なことにミア・ハンセン=ラヴの主張はこの映画自体がベルイマン映画に対して薄っぺらくイキっているせいでただの観光映画に陥ってしまう。観光客がフォール島に来て、美しい風景をバックに、『沈黙』、『仮面/ペルソナ』、『第七の封印』とベルイマンのタイトルを連呼しているのを撮っているだけに感じてしまうのだ。
ミア・ハンセン=ラヴは『EDEN/エデン』こそ面白かったが、『未来よ こんにちは』や『あの夏の子供たち』とフランス的哲学話を美しい風景を背に展開しているが、どこかイマイチに感じるのですよ。
特に今回はベルイマンを持ち出してあれなので『グッバイ・ゴダール!』を観た時のような腹立たしさも感じました。
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※IMDbより画像引用