水の中のつぼみ(2007)
原題:Naissance des pieuvres
英題:Water Lilies
監督:セリーヌ・シアマ
出演:ポーリーヌ・アキュアール、アデル・エネル、ルイーズ・ブラシェール、ワラン・ジャッカン、クリステル・バラ、マリー・ジリ・ピエール、アリス・ドゥ・ランクザン、クレール・ピエラetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
母親がWOWOWに加入したので、ラインナップを見ていたらセリーヌ・シアマ長編デビュー作『水の中のつぼみ』が配信されてました。本作はデビュー作にして第60回カンヌ国際映画祭ある視点部門に選出され、『ミナリ』のリー・アイザック・チョン『Munyurangabo』、ディアオ・イーナン『夜行列车』、『迷子の警察音楽隊』などと賞を競い合った(受賞はクリスティアン・ネメスクの『カリフォルニア・ドリーミン』)。
近年、日本でも『燃ゆる女の肖像』、『トムボーイ』、『ガールフッド』と次々公開され注目されているセリーヌ・シアマのデビュー作は中々遭遇できなかっただけに観てみました。
『水の中のつぼみ』あらすじ
パリ郊外の新興住宅地を舞台に、10代の若者の微妙な心の揺れやみずみずしい美しさをスクリーンに焼き付けた青春映画。3人の少女たちが織り成すひと夏の微妙な人間関係を、同性への恋心やセックスへの憧憬も含めて描き出す。男女を惑わす色香を放つ少女を演じるのは『クロエの棲む夢』のアデル・ヘネル。監督はこれがデビュー作となる27歳のセリーヌ・シアマ。刻々と変化しつつある10代の気分を鮮やかに切り取った監督の手腕がさえる。
セリーヌ・シアマによる群れの外側の眼差し
マリー(ポーリーヌ・アキュアール)は親友アンヌ(ルイーズ・ブラシェール)の試合を応援しにシンクロナイズド・スイミング競技会場にやってくる。しかし、そこである女性に一目惚れしてしまう。フロリアーヌ(アデル・エネル)に会いたいが為に、スイミング教室に入るが、上手くいかない恋愛に悶々を募らせていく。
本作は日本の青春映画におけるクリシェ「感極まると走る」のヨーロッパ版「クラブで踊る」を安易に使っていたり、水の要素があまり機能していなかったりデビュー作ならではの未熟さがある。
しかしながら、シンクロナイズ・スイミングの群れを見つめる眼差しに鋭さを感じる。学校等で、狭いコミュニティにいながらも居場所がなく、居場所を求めて視線を送るが気づいてもらえないあの葛藤。恐らく、セリーヌ・シアマは多感な時期に孤独を経験しているのだろう、経験者にしかわからないような距離感をシンクロナイズ・スイミングの群れで表現しているのが興味深かった。
尚、本作はパリ郊外の閉塞感を扱っているのだが、それは『ガールフッド』へと受け継がれていく。また、恋の繊細な距離感は『燃る女の肖像』にも繋がっており、セリーヌ・シアマ監督の原点が凝縮された作品と言えよう。
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※IMDbより画像引用