【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『戯夢人生』自然は現実を無視する

戯夢人生(1993)
The Puppetmaster

監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
出演:リー・ティエンルー、リン・チャン、ウェイ・シャオホイetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている侯孝賢の傑作『戯夢人生』。日本だとTSUTAYA渋谷店のVHSぐらいでしか観ることができず、侯孝賢特集でもなかなか上映されない作品。遂に観ることができました。

『戯夢人生』あらすじ

日本占領下の台湾を舞台に、ホウ・シャオシェン作品の常連俳優でもあった人間国宝的人形使いリー・ティエンルーの半生を詩情豊かに描いた作品。リー本人も語り手として登場する。カンヌ映画祭で審査員賞を受賞した。

※東京フィルメックスサイトより引用

自然は現実を無視する

布袋戯で流れる心地よい音の中ゆっくりと時間が流れる。スマホなんかない時代。人々は目の前に流れる時間を大切にしていた。他者と食事をする時間。布袋戯をじっくりと観賞する時間など。一方で、時間がゆったり流れるからこそ、日本軍の意地悪は間延びした居心地の悪さを与える。『戯夢人生』という美しいタイトルは、まさしく夢のように戯る人生の走馬灯となっているのだが、その美しさ故に日本に支配されることの息苦しさが痛々しく思えてくる。

注目すべきは、ジョン・フォード映画のようにダイナミックに自然を捉えた中で映し出される人間の営みだ。特に、日本軍が草原の中で台湾人に暴行を加える場面は、負の要素が一切ない空間の中で暴力が展開されるので、その凶暴性が力強く映し出されていると言える。

結局、自然というのは人間の活動とは無縁に晴れたり雨を降らすものだ。時間の流れも今や情報化社会で人間が握ってしまっているところがあるが、日本が支配していた時代は主に自然が時間を支配していた。この空気感を醸造できている時点でこの映画は最高のクオリティであろう。

まあ、自分が語るよりも映画を観てほしい。言葉だけでは説明できぬ美しき悲しさが詰まった映画なのですが、リマスター版を上映できたりできないのだろうか?一応2015年の東京フィルメックスで上映はされているのだが、それ以降遭遇しにくい状況となっている。もし『戯夢人生』観るチャンスがあったら逃さない方が良いですよ。

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※東京フィルメックスより画像引用

 

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