【 #サンクスシアター 16】『おやすみ、また向こう岸で』山中瑶子、恐ろしい子

おやすみ、また向こう岸で(2019)

監督:山中瑶子
出演:三浦透子、古川琴音、中尾暢樹etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Mini-Theater AIDのリターンであるサンクスシアターで山中瑶子監督のドラマ『おやすみ、また向こう岸で』を観ました。

『おやすみ、また向こう岸で』あらすじ

主人公ナツキは、ある違和感を抱えながら恋人のヒロキと同棲中。そんなとき、高校の同級生・カナコと再会し、ヒロキに明かせないままでいた本当の気持ちを吐露する。

※サンクスシアターより引用

山中瑶子、恐ろしい子

山中瑶子監督は以前から『あみこ』、『魚座どうし』とすごい作品を放っている噂を耳にしていたが、今回初対面するとその凄まじさにノックアウトされた。小津安二郎ばりの厳格な空間による女の気持ちの距離感を表象する。そして「リトアニア」という言葉がいかにも出てきそうな、北欧のようで少しズラしてあるインテリア、山中瑶子監督の領域展開に一気に引き込まれた。日本映画でありながらも海外に向いているような映像の質感は、数年後にカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に進出する予感を抱かせる。

話自体はインディーズ映画にありがちな、男と女の心のモヤモヤをぶつけるもの。陳腐すぎてあまり興味は持てないものの、この空間の美学と、ゆるい雰囲気に反して後半、黒沢清ばりの不気味な立ち画が形成されるところに鳥肌が立ちました。

一般的にエリック・ロメール、ホン・サンス、ジム・ジャームッシュ的会話劇は真似すると大火傷する。だが、濱口竜介をはじめ今泉力哉、山中瑶子と自分の映画理論と融合させ、独特な会話劇を生み出す監督が増えてきて嬉しい。濱口竜介監督が、ベルリン、カンヌで大暴れしている今、この手の監督に道は開かれている。閉塞感ものだけじゃない突破口が見えて日本映画の未来は明るいと思います。

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