【CPH:DOX】『Tina』A Fool in Love

Tina(2019)

監督:ダニエル・リンジー、T.J.マーティン

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

HBOは今、ネットフリックスのフォロワとしてグイグイ追い上げている。マイケルジャクソンの性的虐待を扱って物議を醸した『ネバーランドにさよならを』やドキュメンタリー監督が過去の性的虐待を劇映画として再現した『ジェニーの記憶』、チェルノブイリ原子力発電所事故の裏側を描いたドラマシリーズ『チェルノブイリ』などを配給、制作している。日本ではU-NEXTにHBO作品が来るようになり注目が高まり始めているが、Netflixに匹敵する壮絶なドキュメンタリーの隠し球をたくさん持っています。

新型コロナウイルス蔓延初期にクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で何があったのかを捉えた『ラスト・クルーズ』。人工授精専門の医者が30年にも渡り自分の精子を使って人工授精を行ってきた話を暴く『Baby God』。安全性に問題がある危険なアミューズメントパークの実態に迫った『Class Action Park』などがHBOから輩出されているのだ。一方で、HBOでは音楽ドキュメンタリーも配給している。今回紹介するのは、CPH:DOXで配信されたティナ・ターナーの伝記ドキュメンタリー『Tina』です。監督は『アンディフィーテッド 栄光の勝利』で弱小アメフトチームの再建を取材し84回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したダニエル・リンジー、T.J.マーティンのコンビです。

『Tina』概要

To embrace the power that lies dormant within TINA, she must face herself.
訳:ティナの中に眠っている力を受け入れるためには、自分自身と向き合わなければなりません。

※imdbより引用

A Fool in Love

ティナ・ターナーといえば、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「プラウド・メアリー」のカバーが有名であろう。囁くような語りから始まり、波のようにバックコーラス、時に観客とRollingを連呼していく。そして、ある一定のラインで爆発し、疾風怒濤観客を波に飲み込んでいくパワフルな演出はインパクト大。あのグッチ裕三も教育番組ハッチポッチステーションにて「どんぐりころころ」の替え歌として本曲を選ぶほどの名曲であります(子ども向け番組でやる内容ではない)。映画ファン目線からすると、『Tommy/トミー』でロジャー・ダルトリー演じる聴覚/視覚を失った男をヤク漬けにするAcid Queen役や『マッドマックス/サンダードーム』の女支配者アウンティ・エンティティ役で知られている。

そんなインパクト大なアーティスト、ティナ・ターナーの人生は壮絶であった。アイク・ターナーに見出された彼女は彼のバックコーラスから関係性を築き、一気にスターダムにのしあがるが、その裏ではアイク含め彼女をコントロールしようとする男たちの存在がチラついていた。アイク・ターナーがスランプに陥ると、アルコール中毒とコカイン中毒も重なりティナに暴力を振るうようになる。

行き場のない彼女は、宗教に救いを求めた。「南無妙法蓮華経」を唱え続けることで精神を保とうとしていたのだ。やがてアイクと決別し、ソロで活動するようになると、ミック・ジャガーに気に入られローリング・ストーンズのライブに度々出演するようになりキャリアは回復していく。

本ドキュメンタリーはその壮絶な人生を回顧録として収めた作品となっている。正直、ティナ・ターナー入門な作品故に彼女のことを知っている人が観ると物足りなく感じるかもしれない。彼女の音楽も少なめで、アイクとの関係性を掘り下げる内容となっているので、観るひとを選ぶ作品となっているが、あのパワフルさの裏に隠された素顔に心揺さぶられること間違いありません。

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