コップ・ムービー(2021)
A COP MOVIE
Una Pelicula de Policias
監督:アロンソ・ルイスパラシオス
出演:ラウル・ブリオネス、モニカ・デル・カルメンetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
デンマークで開催されているCPH:DOXに第71回ベルリン国際映画祭で芸術貢献賞を受賞したメキシコ映画『A COP MOVIE』を観ました。監督のアロンソ・ルイスパラシオスは前作『Museo』で同祭脚本賞を受賞している新鋭だ。果たして…
※2021年11月Netflixにて邦題『コップ・ムービー』で配信決定
『A COP MOVIE』あらすじ
Two professional actors undergo an immersive process to find out what it takes to be a cop in Mexico City.
訳:2人のプロの俳優が、メキシコシティの警官になるために必要なものを見つけるために、没入型のプロセスを行います。
メキシコの警察24時
警察無線に連絡が入る。女性警察官Teresa(モニカ・デル・カルメン)は緊迫しながらパトカーを停める。男がにじり寄ってくる。腰に手を当てている。観客は激しい銃撃戦が始まると思う。だが、男の腰から出てきたのはスマホだった。警察映画のクリシェだったら、このアヴァンタイトルで銃撃戦が始まりそうだが、本作はそのクリシェを裏切り、女性の出産の手伝いが描写される。
そうです。本作は『A COP MOVIE』というシンプルなタイトルに則り、警察映画のクリシェを繋いでいくのだが、絶妙なタイミングで次々と裏切っていくドラマなのだ。それにより、ドキュメンタリーと劇映画の垣根を超えていく。なるほどベルリン国際映画祭芸術貢献賞も納得である。
身支度を整え、3階くらいから鍵を落としてもらう。うまくキャッチできず、杜撰に地面に落とされる鍵。Teresaはカメラ目線で饒舌に警察の仕事について語るが、どんくささが妙なリアリズムを醸し出す。犯人とのチェイスが始まるが、豪快に男の新聞をブチまけ、エスカレーターを颯爽と乗り越えようとするもののずんぐりむっくりとした図体がそれを邪魔をし、迂回せざるえない。どこか滑稽である。
本作にはもう一人主役がいる。Montoya(Raúl Briones)だ。彼は男性警官として生きている。メキシコの警察は大変だ。何故か、警察備品を借りるのにお金が必要なのだ。だが、街中で差し入れとしてお金をもらいそれを横領することでやりくりしているのだ。
本作では、メキシコ警察の苦悩をドキュメンタリーとの垣根を乗り越えることで多面的に捉えている。クリシェを裏切ることにより独特の生々しさを抽出しており、例えば射撃訓練の場面ではリボルバー銃をなかなか撃てない女性の緊迫した空間が堪らないものとなっている。
アロンソ・ルイスパラシオスは今後も期待できる監督であることは間違いないことでしょう。
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※imdbより画像引用