『渇きと偽り/The Dry』陽光の中のフィルム・ノワール

渇きと偽り(2020) The Dry

監督:ロバート・コノリー
出演:エリック・バナ、ジェネヴィーヴ・オーライリー、キア・オドネル、ジョン・ポルソン、ジュリア・ブレイクetc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

予告編に惹かれてエリック・バナ主演作『The Dry』を観ました。オーストラリア産の色彩豊かなフィルム・ノワールといった感じでした。

『The Dry』あらすじ

Aaron Falk returns to his drought-stricken hometown to attend a tragic funeral. But his return opens a decades-old wound – the unsolved death of a teenage girl.
訳:アーロン・フォークは、悲劇的な葬儀に出席するため、干ばつに見舞われた故郷に戻ってきた。しかし、彼が戻ってきたことで、10代の少女の未解決の死という数十年来の傷が開いてしまう。

IMDbより引用

陽光の中のフィルム・ノワール

フィルム・ノワールといえば、悪の世界を描いた白黒映画のイメージが強いが、カラー映画の時代にも「フィルム・ノワール」と名乗れる映画があると思っている。フィルム・ノワールとは、過去の宿命や犯罪計画、ファムファタールによって人間の邪悪な部分が抽出することに特徴あると思っている。『アスファルト・ジャングル』における様々なプロフェッショナルによる完璧な計画が、綻び、迫りくる警察の影により怯え心の闇が噴出するように。さて『The Dry』はStefan Duscioによる美しいオーストラリアの大地に反して、人間の闇が広がっていく様子を捉えている。

連邦捜査官アーロン・フォーク(エリック・バナ)は友人の葬式に参列するため、20年ぶりに故郷・キワラに帰ってくる。しかし、キワラの住人は招かれざる客であるアーロンにいい顔をしない。嫌がらせをする。実は、フォークは20年前に恋人が死んだ。恋人の死の原因を作ったのではないかと疑われ、 20年経った今でも関係性が癒えていないのだ。しかし、友人の死因に違和感を抱いた彼は町に残り調査をすることを決意する。町人たちはなかなか彼に協力しない中、少しずつ違和感の正体を掴んでいく。

美しき陽光に包まれた大地、その陰りを映画は魅せていく。これは、フォークが自身の過去、そして殺人が起こってしまった真相という闇に近づいていくことを象徴している。

その陰りの部分は、まるで黒沢清映画のように重く陰惨とした闇となっている。ホテルの寝室、バーなどがそれにあたる。一般的に、美しい自然は人々の心の閉塞感を解放する存在だが、どこへでもいけそうに広がっているがどこにも行けない存在として自然を描くことで、20年にも及ぶしがらみが強調されている。

面白いかと言われれば、往年のフィルム・ノワール同様私と相性の悪い作品ではあるが、印象的なショットが多かったのは事実である。

※IMDbより画像引用