第71回ベルリン国際映画祭

2021映画

【ネタバレ考察】『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』ハリボテのマスクは、アバターを現実に引き摺り出す

イメージフォーラム・フェスティバル2021でルーマニア・ニューウェーブの鬼才ラドゥ・ジューデの新作『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』が上映された。本作は第71回ベルリン国際映画祭で最高賞である金熊賞を受賞しており、またコロナ禍を扱っていることで話題となった作品だ。当ブログでも『THE DEAD NATION』、『UPPERCASE PRINT』を紹介し、監督のユニークな演出に驚かされてきたわけですが『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』それらを遥かに超える進化を魅せてくれました。尚、ネタバレ考察記事です。

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【CPH:DOX】『バッハマン先生の教室』6年B組バッハマン先生

驚いたことに、AC/DCの若干ヨレた服を着てダラんと座りながら授業をし始めるのです。確かに海外の学校はラフな姿で授業をするイメージが多いのですが、それにしてもユルすぎるだろうと思わずにはいられない。そして、生徒との間合いの詰め方も独特でどこか教祖のような怪しさもある。生徒も退屈そうに授業を聞いている。音楽の授業では、生徒たちに楽器を習得させて、いざ発表のタイミングになると、我先にヴォーカルを担当し、渋い歌声を轟かせている。大丈夫だろうか。私とバフマン先生の出会いは良いとはいえなかった。

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【MUBI】『UPPERCASE PRINT』プロパガンダの皮をひらいてとじて

チャウシェスク政権下で見つかった落書き。自由を求めるメッセージが込められたその落書きを巡って秘密警察は動き始め、若者Mugur Calinescuが殺されてしまう。それを、テレビ番組のようなステージの上で人々が再構築していく。話されることは物騒なことばかりなのに、そこで挿入される映像は子どもが「おかあさんといっしょ」のような空間の中でワイワイ遊んでいたり、経済成長しているアピールをするCM、軍隊や市民による集団行動だったりするのだ。つまり、表面的には国家として成功しているように見えて、その実情は市民の声を踏みにじっている。それをまるで、シールをひらいてとじる感覚で演劇パートとフッテージを交差させることによって辛辣に社会批判してみせるのだ。プロパガンダの再構築によって新たな社会批評の方法を模索している監督にセルゲイ・ロズニツァがいる。彼は『国葬』の中でスターリン時代のプロパガンダを再構築することによって、プロパガンダで封殺されて市民の痛みを強調していたが、『UPPERCASE PRINT』の場合、淡々と喋る役者の演技とプロパガンダが悪魔合体することによって、痛みが継承されていく過程まで描けていた。