DAU.ニューマン(2020)
DAU. New Man

監督:イリヤ・クルザノフスキー Ilya Permyakov
出演:Maksim Martsinkevich, Viktoria Skitskaya, Vladimir Azhippo etc

0.1 評価:55点

1 『DAU. New Man』あらすじ
2 初心者のための『DAU. Degeneration』
3 DAU.関連記事

評価:55点

『DAU. NEW MAN』:《DAU》ユニバースの問題点しかない作品。

結局街を作り、膨大なエキストラを送り込んだが、十何本も物語るネタはなく、『DAU. DEGENERATION』の映像を使い回しまくる暴挙に出る。

『デカローグ』から単品作品が出るのとは訳が違う。

ただの手抜きだ。 pic.twitter.com/OM8qBD3o52
— che bunbun@映画の伝道師 (@routemopsy) June 5, 2020

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今、日本では『DAU.ナターシャ』が公開されて、その世界観の異常さから賛否が真っ二つに分かれている。DAUが14作品も存在することを知っている人が意外と少ないので、積極的にTwitterで宣伝しているのですが、『DAU. New Man』を観ているにもかかわらずまだブログに書いていませんでした。内容忘れてしまったので改めて観直しました。

『DAU. New Man』あらすじ

Maxim and his comrades-in-arms are participating in top-secret experiments into the creation of a new man. The employees of the secret Institute are characterized by everything Maxim detests: alcoholism, depravity, weak will, loss of ideals, and lack of faith in the future. Vika, one of the waitresses in the Institute’s cafeteria, falls in love with the young communist, though she is scared by his fascination with eugenics and his violent tendencies. She hopes that her passion and tenderness will soften him, while the state security agents keep a watchful eye on their developing relationship.
訳:マキシムとその仲間たちは、新しい人間を創造するための極秘実験に参加していた。秘密研究所の従業員たちは、アルコール依存症、堕落、意志の弱さ、理想の喪失、未来への信頼の欠如など、マキシムが嫌うすべての特徴を持っていた。研究所のカフェテリアのウェイトレスの一人であるヴィカは、若い共産主義者に恋をするが、彼の優生学への情熱と暴力的な傾向に怯えていた。彼女は自分の情熱と優しさが彼を和らげてくれることを期待していたが、国家安全保障局は二人の関係の発展を見守っていた。

※imdbより引用

初心者のための
『DAU. Degeneration』

正直、『DAU. New Man』単体であれば非常に面白い作品だ。まさしく若松孝二の『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』のような理想を抱き、己の肉体を鍛錬する者たちがドンドン腐敗していき組織が破壊されて行く様子が生々しく描かれて行く。ソ連の閉塞感というものを捉えるには十分な作品であり、スキンヘッドの男マキシム(Maksim Martsinkevich)がX-MENに出てきそうな人体実験に励んだり、刑務所のような場所で格闘訓練をしたりする場面は視覚的面白さがある。男性的訓練が女=弱い存在に対して搾取して行く様子もよく描けている。その積み重ねが上手いので、終盤の破壊シーンに説得力が帯びていき、抑圧された世界に対する怒りの再現として傑作になっている。

ただ、それでもDAU.映画プロジェクトのスベりっぷりを踏まえるとこの手抜き工事はいただけない。折角、専用のプラットフォームを作り、コロナ禍に便乗して定期的に配信していたのに、『DAU. STRING THEORY』以降更新が止まってしまっていたり、そもそも膨大な人をDAUの世界に投入した割には毎回登場人物は少ない。ということはつまり、映像自体はあるが撮れ高が少なかったことが予想できてしまう。

ソ連時代の閉塞感から生まれるクズというものを多面的に捉えているのは面白いが流石に飽きてきたものがあります。なんだか、このプロジェクト、インスタレーションと映画シリーズが水と油のように反発して失敗している気がします。

2020年末に上映時間30日の映画を作るぞと豪語しておきながらトンズラした『Ambiancé』のアンデシュ・ヴェドベリ監督に比べたらやりきっただけエライと内なるコウペンちゃんが褒めるブンブンでした。