『DAU. NORA MOTHER』その結婚は勲章のため?オカン、娘に圧迫面接の巻

ダウ. ノーラ マザー(2020)
DAU. NORA MOTHER

監督:イリヤ・クルザノフスキー、Jekaterina Oertel
出演:Lydia Shchegoleva、Radmila Schegoleva、THEODOR CURRENTZIS etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、《DAU》ユニバース3作目『DAU. NORA MOTHER』が解禁となりました。《DAU》ユニバースはどれも長尺だと噂される中、この新作は80分程の短距離走。更には『秋のソナタ』みたいな作品らしい。これは期待と思ってみました。これは中々ハードな作品でありました。

『DAU. NORA MOTHER』あらすじ


Once just a girl from the provinces, Nora is now married to a successful scientist and lives together with her family within the confines of a secret and privileged Moscow institute. Nora is visited by her mother for the first time since her wedding. Her mother closely observes the atmosphere within the couple’s home, trying to work out whether her daughter is happy. During the course of their intimate conversations the complexity of their contradictory relationship is revealed.
訳:かつて地方出身の少女だったNoraは、成功した科学者と結婚し、秘密の特権的なモスクワ研究所の範囲内で家族と一緒に暮らしています。Noraは、結婚式以来初めて母親のもとを訪れます。彼女の母親は夫婦の家の雰囲気を注意深く観察し、娘が幸せかどうか調べようとしています。彼らの親密な会話の過程で、彼らの矛盾した関係の複雑さが明らかになります。
DAU公式サイトより引用

その結婚は勲章のため?オカン、娘に圧迫面接の巻

姑が息子の嫁を虐めるという光景はテレビドラマや痴話話のネタとして描かれている。どうして姑は息子の嫁を虐めるのだろうか?また、どうして親は子どもの行動にイチイチ口出しするのだろうか?それは恐らく、長年育ててきて、ある種自分の身体の一部となった子どもが赤の他人の一部に取り込まれたことにより精神が不安定になる結果であろう。また自分に対する愛の一部が他者に奪われてしまったことによる嫉妬であろう。

そして『DAU. NORA MOTHER』ではそういった感情を暴力的な形で表現した一作だ。Noraは科学者レフ・ランダウと結婚した。彼は科学者として成功を収めている。言わば玉の輿に乗った訳だ。そんな彼女は久しぶりにオカンと会う。ランダウと彼女はいちゃつきながらオカンとのひと時を過ごすのだが、ランダウが仕事に出て行き二人きりになるとこう言う。

「あんた、あんな男と大丈夫なの?」

とそこから激しい圧迫面接が始まる。

「彼はあんたを愛していない」
「あんたは私を愛していない」

と畳み掛けてくるのだ。

実はこの結婚は心での結婚ではなく、単なる財産目当ての結婚だったのでは?そこに愛なんてなかったのでは?といった化けの皮が剥がされ、NORAの精神は純白な雪景色と対照的に灰色に染まっていくのです。

《DAU》ユニバースは毎回ストイックな展開が用意されている。『DAU. NATASHA』の長時間にわたる酒バトルシーンや、『DAU. DEGENERATION』の長い長い乱行騒ぎの数珠つなぎなど。倫理的限界に挑んでいるため、今回も例に漏れず、生々しい圧迫面接に胸が締め付けられる思いをしたのですが、このリアルさは正確に母親のある感情を仕留めにきていた。

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