『ホームレスが中学生』浦安鉄筋家族からビッグイシューへ

ホームレスが中学生(2008)

監督:城定秀夫
出演:うつのみや八郎、蛭子能収、和希沙也、パッション屋良etc

評価:75点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

性の劇薬』、『覗かれる人妻 シュレーディンガーの女』と俗を極め独特のショットや演出でカルト的人気を博している城定秀夫。彼が昔、麒麟の田村裕自叙伝の映画化『ホームレス中学生』公開に合わせて製作するよう無茶振りされて『ホームレスが中学生』を生み出した。本作は2020/7/21現在Filmarksで本家に僅か0.1点届かない2.8/5.0(Filmarksだとかなり低い点数)を叩き出しているのだが、有識者曰く傑作とのことなので観てみました。

『ホームレスが中学生』あらすじ

数十年振りに中学3年をやり直すことにした須崎勝(うつのみや八郎)。生徒たちは臭くて汚いホームレスの須崎に冷たい視線を浴びせかけるも、映画研究会の翔太(石崎直)たちはホームレスの生活をテーマに須崎に密着取材することを決める。そんなある日、父親(阿藤快)との確執で家を出た翔太が、須崎のテントに転がり込んでくる。
Yahoo!映画より引用

浦安鉄筋家族からビッグイシューへ

時はとある中学校の3-D。城定映画お馴染みのちょっとエッチな学校教師がダルそうな声でクラスの治安を収めている。そこに、のっそりとホームレスが登場する。どうやら今日からこのクラスに転校することになったそうだ。校長不在につき、何かの手違いだとしても彼を追い出すことは出来ない。手続きを踏んで中学校に彼は転校してきたのだ。こうして浦安鉄筋家族的大げさ暑苦しいギャグから本作は始まる。彼の強烈な悪臭に耐えきれず、クラスメイトはソーシャルディスタンスを引く中、映画部の連中は彼に惹かれ、カメラを回し始める。そして、学校の先生は「個人情報の保護」という名の責任回避や権力の行使で、生徒に彼の面倒を見させるのだ。一見すると非常に差別的な内容に見える。しかしながら、そこに映し出されるのは社会の縮図である。外見で拒絶するもの、好奇心で傍観者に徹するもの、厄介なものを他者になすりつける者。ホームレスなんかよりも余程汚い人間がそこに映し出されるのです。

それが、傍観者だった映画部の連中が、失礼なまでに彼のプライベートに入り込み、彼を少し怒らせてしまったことから、物語は差別的ギャグ映画からビッグイシューの活動ドキュメンタリーを彷彿とさせる代物へ変貌を遂げていく。彼への侮辱に対する反省から、寄り添い始める映画部。彼は一緒に空き缶拾いを手伝う。しかし、あれだけ頑張っても1,000円ぐらいしか稼げない。その稼ぎをホームレスは映画部に差し出すのだ。

そしてクラスメイトも段々と彼に魅了されていく。掃除になると機動力抜群、クラスの秀才よりも物知り、そして道に50円玉が落ちていれば凄まじい走りを魅せる。彼を敢えて喋らせず、身体の動きとその周囲の反応で彼を特徴づける様子は昨今なんでも台詞で説明しようとしてしまう映画への正しき反抗と言える。と同時に、人は他者からの評価で180度いとも簡単に変わってしまうことを説得力持たせている。

確かに、映画をある程度観ていないとあまりにマニアックすぎるテクニックで、ガラクタのように見えるかもしれないが、私には宝石だと感じた。

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