『The Shrouds』私のお墓を破壊しないでください

The Shrouds(2024)

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ヴァンサン・カッセル、ダイアン・クルーガー、ガイ・ピアース、サンドリーヌ・ホルト、アル・サピエンザetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

デイヴィッド・クローネンバーグ新作『The Shrouds』がMUBIで配信されたので観た。円安の影響なのか、カンヌでの評判が悪すぎたせいなのか未だに日本公開の目途が経っていないのだが、確かに問題作のように思える。

『The Shrouds』あらすじ

Karsh, an innovative businessman and grieving widower, builds a device to connect with the dead inside a burial shroud.
訳:革新的な実業家であり、悲しみに暮れる未亡人でもあるカーシュは、埋葬布の中にいる死者と連絡を取る装置を開発した。

IMDbより引用

私のお墓を破壊しないでください

本作は『マップ・トゥ・ザ・スターズ』以降、妻を失い映画が撮れなくなったクローネンバーグの心象世界を描いているような作品であり、ヴァンサン・カッセル演じる実業家の姿はクローネンバーグそっくりとなっている。

妻を失い悲しみに暮れるカーシュは、新しいビジネスソリューション《GraveTech》を開発する。これは墓石にモニターを備え付けており、墓の中で腐敗していく死者の姿をモニタリングできる仕組みとなっている。しかし、倫理的に問題を抱えている本システムは何者かに破壊されてしまい、カーシュは犯人捜しをする。やがて、彼は陰謀論のような世界へと迷い込む。

本作は技術によって《拡張された眼》がパラノイアを助長する様を描いている。通常、人間が腐敗する様子を観ることはできない。しかし、最新技術、3D保管されたある種の虚構を通じて不可視を可視化する。それは死に対する感情を増幅させる。また、亡くなった妻をモデルとしたヴァーチャルアシスタントを開発する。妻はもうこの世に存在しないが残穢のような形で仮想的妻が語り掛ける。このアバターはマーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクが開発したアバターのようなダサさを持ち、それがヌルヌルと官能的に動くので気持ち悪いものとなっている。そして、このバーチャルアシスタントを使って、事件の犯人を日本家屋的空間から監視していく。現代において我々は国外に出ることなく世界中の情報を収集できる。ハッカーのような万能感で情報を得て、それを繋ぎ合わせる中で脳汁が噴出し、静かながらも高揚感に包まれる。それは陰謀論への入り口なのかもしれない。

このような世界でカーシュは片方の胸と腕のない妻の残像と肉体関係を持ち、恐怖と欲望に感情がぐちゃぐちゃにされていく。正直、この露悪的なスペクタクルが「要は死者と肉体関係を持ちたいんでしょ」と本作における理論をしょうもないものに変えてしまっている印象があり、浅墓な演出であった。