ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007)
EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE.
監督:摩砂雪、鶴巻和哉※庵野秀明は総監督
出演:緒方恵美、林原めぐみ、三石琴乃、山口由里子、立木文彦etc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。日本の『ツイン・ピークス』とも言える『新世紀エヴァンゲリオン』。あの訳の分からない新劇場版Qから8年の時が経っていよいよ謎が明かされようとしている。とはいっても『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は『ツイン・ピークス The Return』同様、謎が明かされないであろうと思われる。折角、新作が公開されるのであれば新劇場版を予習しておこうと思い観てみました。一応、個人的なエヴァンゲリオンの変遷について軽く書いておこう(思い出話です)。自分がエヴァンゲリオンと出会ったのは高校3年生の時。学校の友達に誘われて『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を観た。何も予習しておらず、映画ファンとして初対峙したのだが、あまりに惨劇回転寿司の洪水に困惑した記憶がある。全て投げっぱなしで終わる映画を観終えて、友人に「どういうこと?」と訊いたら、「よく分からなかった。」と返ってきたのを鮮明に覚えている。そして何年も、続編が作られずあれは何だったのか反芻するうちに8年が経過したのだが、新型コロナウイルス蔓延で公開されそうで公開されない状態が続いている。今やレオス・カラックスの新作『Annette』(彼も『ホーリー・モーターズ』以来8年ぶりの新作だ)とどちらが先に公開されるのかという状況になっているのだ。
さて、長い話はさておき『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』について書いていきます。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』あらすじ
1995~96年に放送され、社会現象を巻き起こしたTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を、新たに4部作の劇場版として構成する「新劇場版」の第1部。原作・総監督はTV版に続いて庵野秀明。新作パートの画コンテに「日本沈没」の樋口真嗣、「交響詩篇エウレカセブン」の京田知己など、豪華スタッフ陣が参加。14歳の少年・碇シンジは、10年ぶりに再会した父ゲンドウが司令官を務める特務機関NERV(ネルフ)に呼び出され、人型決戦兵器エヴァンゲリオンに搭乗し、使徒と呼ばれる謎の敵と戦えと命令される。
※映画.comより引用
彼は逃げないのではない、逃げられないのだ
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』は殆どテレビ放送版と変わらず、形状変形する第5使徒ラミエルとの戦いまでが描かれる。なのだが、テンポよく構成された本作は、大人や周囲が碇シンジに投げつける言葉の呪いがより一層強烈なものに感じる。碇シンジは、孤独な少年で父親・ゲンドウの愛に飢えている。3年ぶりに父に呼ばれ、使徒との攻防に巻き込まれ命がけでNERV本部に到着したのに、彼は自分を戦争の駒としてしか考えておらず落胆する。
「エヴァに乗る気がないのなら立ち去れ」
と言葉を投げつけられるシンジ。彼は、愛を求めるために「エヴァ」に乗るしかないのだ。彼は巨大で凶悪な使徒に対して弱い心を押し殺しながら戦う。戦闘を通じて「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」と自分に暗示をかけるて、時には撤退命令を無視して戦う。周囲の人は、「逃げたければ逃げていいのよ」と冷たい言葉を投げるのだが、それは呪いとしてシンジに付きまとうのだ。逃げたら、誰からも愛を与えられないのだ。そして彼の眼前には、ゲンドウが綾波レイに愛を与えているように見える場面がある。あまりに残酷な場面だ。自分も認められたい。父に愛されたいという気持ちが彼をエヴァに向かわせるのだが、葛城ミサトや同級生ぐらいしか彼に情を与えてくれない。そんな彼らですら、シンジを厳しく問い詰め、殴打する。戦場では、あまりに強い使徒にフルボッコにされながら毎回死の直前で生還する。中学生に背負わせるにはあまりに重い十字架だ。大人ですら、こんな仕打ち受けたら精神崩壊するだろう。あまりに可哀想だ。
大人になって観ると、非常にシンジというキャラクターが刺さる。非常に困難な仕事。逃げたい仕事は多い。しかし、逃げたら全てを失う。だから逃げ道があるようで、「逃げない」という選択肢しか存在しない。光の道は見えているのに、そこへいけないもどかしさ、辛さをトコトン突きつけてくる壮絶な序章と言えよう。
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※映画.comより画像引用
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