消えゆく者たちの年代記(1996)
Chronicle of a Disappearance
監督:エリア・スレイマン
出演:エリア・スレイマン、アリ・スリマンetc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第21回東京フィルメックスのエリア・スレイマン特集で上映された『消えゆく者たちの年代記』をオンライン配信で観賞しました。コント仕掛けのスペシャリストと私は呼んでいるエリア・スレイマンですが、彼のコントの原点を知ることができる作品でした。
『消えゆく者たちの年代記』あらすじ
ヴェネチア映画祭で最優秀新人監督賞を受賞し、スレイマンの国際的評価のきっかけとなった記念すべき長編デビュー作。普通の人々の何気ない日常生活を点描的に描きつつ、政治や社会を鋭く風刺するその後のスレイマン作品のスタイルが既に確立されている。
※東京フィルメックスサイトより引用
コント仕掛けのスペシャリスト:エリア・スレイマン
まだ、『D.I.』や『天国にちがいない』のハジけっぷりがない頃なので、若干真面目に作られてはいるものの、エリア・スレイマンのコント魂を感じさせる一本だ。例のごとく関連性があまりない小話を少しずつ重ねていき、イスラエルやパレスチナ情勢を風刺していく。ホテルを取ろうにも、訛りで人種を判断され断られるところや店で会計させてくれないところに強い社会的メッセージが込められているのだが、個人的にはそちらよりも、一列に並び立ち小便する警察たちのうち一人が残尿によって取り残されてしまう場面。男が家に出ようとすると警察がぬぅと現れ家宅捜査する展開などといった動きを伴ったギャグの面白さを評価したい。
エリア・スレイマンはこの時点で、言葉による問題を言及している為、動きを通じた社会風刺に特化するようになったと分析することができる。それは『天国にちがいない』でひたすら沈黙し、目に見える異様さからこの社会のヘンテコさを訴え、わずかに話される言葉から文化の違いによって意図せず傷つけてしまう演出に繋がっていると言えよう。
エリア・スレイマン映画は毎回、面白いのだがその面白さを言語化するのが難しい監督の一人である。とりあえず観てくれ!としか言えないところがもどかしい。
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※映画.comより画像引用
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