『BUTT BOY』おしりたんてい ププッ しりめいきゅうあらわる!?

BUTT BOY(2019)

監督:Tyler Cornack
出演:Tyler Rice, Tyler Cornack, Shelby Dash etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨日、ジョン・ウォーターズ2020年のベストテンが発表されました。ジョン・ウォーターズの年間ベストは毎年楽しみにしている企画だ。彼は『ピンク・フラミンゴ』のゲテモノ映画のイメージが強い監督であるが、『ポリエステル』で匂い付きカードを使った映画体験の拡張を試みたり、『シリアル・ママ』では正義の暴走を風刺していたりと、映画というメディアに向き合い、下品でありながら映画の魅力を最大限引き出そうとしている監督である。そんな彼の年間ベストは毎年鋭い。『幸せへのまわり道』や『ある女流作家の罪と罰』で注目されたマリエル・ヘラーを『ミニー・ゲッツの秘密』の頃から賞賛していたり、他の年間ベストでは全く上がってこないガイ・マディン作品を選んでいたりする。ゲテモノ映画好きは歓喜するであろう、『ハウス・ジャック・ビルト』や『ミッドサマー』は敢えてなのか落選していたりする。アート映画から通俗な映画、社会派ドキュメンタリーまでを満遍なく網羅するその超絶技巧の選出センスに毎年唸らせられるのだ。

さて、今年はジョン・ウォーターズ年間ベストの常連であるガイ・マディンやブリュノ・デュモンの新作がない為か、新規開拓のラインナップとなっていた。何よりも、彼以外のベストテンでは出てこないであろう『BUTT BOY』の発掘が今回の目玉である。あらすじを読むと、刑事が連続行方不明事件に対して、男の尻の中に吸い込まれたと睨んで調査するというどうかした内容らしい。

というわけで観てみたのですが、アメリカの「おしりたんてい」はこうも恐ろしいのかと思う程に以上な作品でありました。恐らく、ヒューマントラストシネマ渋谷で開催される未体験ゾーンの映画たち案件な作品である。近年、『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』や『カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-』といった色彩の暴力で引き込むゲテモノ映画が話題に挙がるが、それとは趣が若干異なります。

それでは『BUTT BOY』いってみましょう。

ジョン・ウォーターズ映画ベストテン2020

1.Butt Boy(Tyler Cornack)
2.Swallow/スワロウ(Carlo Mirabella-Davis)
3.ザ・ハント(クレイグ・ゾベル)
4.とっととくたばれ(キリル・ソコロフ)
5.The Audition(イナ・ヴァイセ)
6.ディアスキン 鹿革の殺人鬼(カンタン・デュピュー)
7.The Human Voice(ペドロ・アルモドバル)
8.True History of the Kelly Gang(ジャスティン・カーゼル)
9.アメリカン・マーダー:一家殺害事件の実録(ジェニー・ポップルウェル)
10.Mangrove(スティーブ・マックイーン)
10.シカゴ7裁判(アーロン・ソーキン)

『BUTT BOY』あらすじ


Detective Fox loves work and alcohol. After going to AA, his sponsor, Chip, becomes the main suspect in his investigation of a missing kid. Fox also starts to believe that people are disappearing up Chip’s butt.
仕事とお酒が大好きなフォックス刑事。AAに通っていた彼のスポンサーであるチップは、行方不明の子供の捜査の主な容疑者となる。フォックスはまた、チップのお尻の上に人が消えていると信じ始めます。
IMDbより引用

おしりたんてい ププッ しりめいきゅうあらわる!?

IBMのようなロゴの前で、会社員が踊り狂っている。その中にいるチップ(Tyler Cornack)は、ぼーっとしている。どうも仕事に疲れているらしく、デスクでフリーズしている。家に変えれば、ソファにだらんと赤子を抱えたまま眠っている。倦怠感が彼を包み込む。そして自殺を試みたりしている。そんな中、犬が失踪したり、リモコンが消えたり、子どもまで消えたりする。時は、チップが自殺未遂を図ってから9年後、ワイルドな警官ラッセル(Tyler Rice)はチップを見張っている。彼はやがてチップが一連の失踪事件の鍵を握っており、真実は尻の中。チップがあらゆる物を尻に吸い込んでいるのでは?と思い始めるのだ。

観客も周囲もそんな馬鹿げた話を信じることができないだろう。だが、Tyler Cornackは壮絶で恐ろしい「おしりの世界」を創造してしまっていた。チップが領域展開を始める。クレヨンしんちゃんのように尻をラッセルに向けると、車の窓ガラスが割れる破壊力を持っている。そして、いざ吸い込まれると、そこには『マンディ』さながらの鮮血の世界が待ち受けていた。医者がチップの尻の穴に手を突っ込むのが内側から見え、この煉獄の赫き炎刀を体感せよ!と言いたげな灼熱が全てを呑み尽くそうとする修羅迷宮からどうやって脱出するのかといったサスペンスに繋がっていく。

このブラックジョークについていけるであろうか?

くだらない?どうかしている?

そうです、この映画はくだらなくて、どうかしています。これを描くために、パルプな断片的推理と会話劇を繋げているだけのように見えます。ただ、よくよく見ると、暴力的な挿話の切り貼りが織りなすリズムや、思わぬ伏線回収が積み上がっているからこそ、ラストの大団円が感動的なものとなる。変態映画を観る者が求めている最高のエンディングがここにはあるのだ。と同時に、会社員という抑圧からの暴力的な爆発の戯画のアイデアとして『BUTT BOY』は唯一無二な存在だ。

とにかく、この怪作はいち早く日本公開され、観た者と語り合いたい。

丁度、popeyeで「誰かと話したくなる映画。」特集が組まれているが、『BUTT BOY』このその《映画》である。

※IMDbより画像引用

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