『真夏の夜のジャズ4K』シラけた会場のバイブスが上がる瞬間

真夏の夜のジャズ4K(1959)
Jazz on a Summer’s Day

監督:バート・スターン
出演:ルイ・アームストロング、チコ・ハミルトン、アニタ・オデイ、チャック・ベリーetc

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今の時代はA24ではなくKINO LORBERだと言いたい。コロナ禍のビジネス戦略として、映画館に課金できるオンライン映画館を主導したKINO LORBERは旧作のリマスター、リストア版の配給にも力を入れており、今年はハンガリー映画の巨匠サボー・イシュトヴァーンの作品を次々とリリースしていたりする。そんなKINO LORBER渾身の一本が『真夏の夜のジャズ4K』である。「101CULT MOVIES YOU MUST SEE BEFORE YOU DIE」に掲載されている本作は音楽ドキュメンタリーの傑作として伝説化されている。そんな作品を角川配給で日本公開決まるとは思いもよらなかった。『アングスト/不安』に次ぐ2020年のサプライズであった。夏に公開された時は、上映館の少なさに苦しめられて観られなかったのですが、そんな声を聞きつけたのか、あつぎのえいがかんkikiで上映が決まった。しかも驚音上映だった。一度は観ているのですが、映画館でなんとしても観たかったので行ってきました。感動して泣きました。

『真夏の夜のジャズ4K』あらすじ


アメリカ・ジャズ界最大の音楽フェスティバル「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を捉えたドキュメンタリー。1958年に開催された第5回の同フェスティバルを記録した。「ジャズの父」とも呼ばれる20世紀を代表するジャズミュージシャンのルイ・アームストロングや、ジャズ界有数の作曲家として多くのミュージシャンに影響を与えたセロニアス・モンク、ザ・ビートルズやローリングストーンズ、ビーチ・ボーイズなど多くのミュージシャンにカバーされ、「ロックの創造者」と呼ばれたチャック・ベリーなど、伝説のミュージシャンたちが続々と登場。また、ミュージシャンのほかにもフェスを楽しむ観客たちの姿が多く映し出され、当時のファッションなども見どころになる。監督は、後にオードリー・ヘプバーンやエリザベス・テイラー、マドンナといった錚々たる女性たちを被写体にした大御所カメラマンとなるバート・スターン。大胆な撮影手法や美しい映像が反響を呼び、幾度もリバイバル公開されている。日本では1960年に初公開。2020年には、日本公開60年を記念して4Kのあざやかな映像でリバイバル。
映画.comより引用

シラけた会場のバイブスが上がる瞬間

「聖者の行進」が響き渡る街。

今やリスク管理やSNSで感動を共有する時代となってしまったが半世紀以上前のライブには自由があった。船でレジャーを嗜む人々、しかしライフジャケットも着ずに、頼りないロープを掴みニコニコしながら快晴の海を味わう。今見ると危険なんだけれども、それは21世紀の過剰な反応なんだと気づかされる。ゆったりと時間が流れる中で、演者は音をチューニングする。運営は、険しい顔で議論しつつも、そこには時間的余裕がある。ライブが始まると、人々は読書をしたり、サンドウィッチを食べたり、音楽を子守唄にして寝たりとフリースタイルで空間を楽しむ。「誰かと共有しなきゃ」という感覚はなく、空間がおりなす快感に身を委ねる。それだけに全集中するのだ。

そんな失われたレジャーの一時に、今はなんて窮屈になってしまったんだろうと思う。コロナ禍でライブができない今だから、眼前に映る「密な蜜」に羨望を抱くのだ。

そんな中、現れるのは『マイ・フェア・レディ』のオードリー・ヘプバーンを彷彿とさせる派手ながらもスタイリッシュなファッションで降臨するアニタ・オデイだ。彼女の知名度はないのか、会場はシラけている。ムッとした顔、退屈した顔、眠そうな顔が広がる中、彼女の美声が轟く。ラップもボイスパーカッションもメジャーではない頃、彼女の超絶技巧の口さばきが展開される。彼女は会場がどうであれ、緊張や焦りは一切見せない。自分を信じる、それがプロの仕事だ。すると、会場が段々と熱気づいてくる。こうして、赤ちゃんまでもが踊り狂う大団円となる。この美しさ、『とんかつDJアゲ太郎』で師匠が、「ステージは輝いているが、同時に地獄だ。何が起こるかわからない。そのプレッシャーに耐えられるのか?」と語っていたが、その答えはアニタ・オデイのパフォーマンスが教えてくれた。

そして昔観たときには、ルイ・アームストロングの独特な発音で小話の内容が理解できなかったのですが、これもまた粋だった。ロンドンで体重を測ってくれる人がいて、お金を入れる。そして「体重はどうだ?」と訊くと、重すぎて「私にはわかりません」と言われてしまうのを豪傑な笑いでユーモラスに話す様子はさすがレジェンドだと思う。

延々にこの会場にいたい。

私の中で「聖者の行進」が鳴り続けました。

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