『パブリック 図書館の奇跡』青春スターエミリオ・エステベスが語る図書館の役割

パブリック 図書館の奇跡(2018)
The Public

監督:エミリオ・エステベス
出演:エミリオ・エステベス、アレック・ボールドウィン、クリスチャン・スレーター、ジェフリー・ライトetc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

みなさん、突然ですが図書館ってどういったところか話せるだろうか?

本を借りる場所?
DVDを借りる場所?

実はそれ以外にも大きな役割を担っています。その様子はフレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』を観ると分かります。低所得者のためにWi-fiを貸したり、失業者が就職活動する拠点として開放したり、点字教室にプログラミング教室、居場所のない人の為のコミュニティ開催などその業務は多岐に渡る。何故、図書館がそこまで多くの業務を行う必要があるのだろうか?それは、図書館には「情報機会の平等」という使命があるからです。どんな人でも情報にアクセスできる場を提供する。情報格差が激しい時代だからこそ、図書館は情報を得る機会の提供に情熱を注いでいるのです。

さて、そんな図書館を舞台にした映画『パブリック 図書館の奇跡』が7/17より公開される。

本作は、『アウトサイダー』、『ブレックファスト・クラブ』、『セント・エルモス・ファイアー』と80年代ヤングアダルト映画を支えた青春スターことエミリオ・エステベスが、ロサンゼルス・タイムズに寄稿された記事《Written off(CHIP WARD)》に触発されて10年以上温めて作られた作品です。ソルトレイク市の公共図書館が実質ホームレスの避難所になっていることを綴ったこのエッセイは確かにパワフルだ。

In bad weather, most of the homeless have nowhere to go but public places. Local shelters push them out at 6 in the morning and, even when the weather is good, they are already lining up by the time the library opens at 9 because they want to sit down and recover from the chilly dawn or use the restrooms. Fast-food restaurants, hotel lobbies, office foyers and shopping malls do not tolerate them for long. Public libraries, on the other hand, are open and tolerant, even inviting and entertaining places for them to seek refuge from a world that will not abide their often disheveled and odorous presentation, their odd and sometimes obnoxious behaviors and the awkward challenges they present.
訳:悪天候時には、ホームレスの多くは公共の場所以外に行く場所がありません。地元の避難所では朝6時に押し出し、天気が良くても9時の開館時にはすでに並んでいるのは、夜明けの冷え込みから腰を下ろして回復したい、トイレを使いたいという理由からだ。ファーストフード店、ホテルのロビー、オフィスのホワイエ、ショッピングモールなどは、長い間それらを容認していません。一方、公共図書館は開放的で寛容であり、彼らがしばしばみすぼらしくて臭いプレゼンテーション、奇妙で時に不愉快な行動、そして彼らが提示する気まずい挑戦に耐えられない世界からの避難場所として、彼らを歓迎し、楽しませてくれる場所でさえあります。

そんなエッセイのエッセンスをエミリオ・エステベスは『ボビー』、『星の旅人たち』同様鋭く面白く描いてみせました。

『パブリック 図書館の奇跡』あらすじ


「ブレックファスト・クラブ」「レポマン」などで知られる俳優で、「ボビー」「星の旅人たち」など映画監督としても活動するエミリオ・エステベスが製作、監督、脚本、主演を務めたヒューマンドラマ。オハイオ州シンシナティの公共図書館のワンフロアが約70人のホームレスたちに占拠された。記録的な大寒波の影響により、市の緊急シェルターがいっぱいで彼らの行き場がなくなってしまったのだ。彼らの苦境を察した図書館員スチュアートは図書館の出入り口を封鎖するなどし、立てこもったホームレスたちと行動をともにする。スチュアートにとってそれは、避難場所を求める平和的なデモのつもりだった。しかし、政治的イメージアップをねらう検察官やメディアのセンセーショナルな報道により、スチュアートは心に問題を抱えた危険な容疑者に仕立てられてしまう。エステベスが主人公のスチュアート役を演じるほか、アレック・ボールドウィン、クリスチャン・スレイター、ジェフリー・ライト、ジェナ・マローン、テイラー・シリングらが顔をそろえる。
映画.comより引用

青春スターエミリオ・エステベスが語る図書館の役割

オハイオ州シンシナティの公共図書館は毎朝、多くの人が長蛇の列を作って今か今かとオープンを待っている。学生もいるが、大半は居場所のない者である。ユダヤ人差別を発する困った常連もいるが、図書館員はやんわりと受け入れている。図書館はファストフード店とは違って長時間自由に、しかも無料でくつろぐことができる。なので、トイレで身だしなみを整えたり、パソコンで手紙を書いたり、はたまた友人と談笑しながら彼ら/彼女らは朝から晩まで図書館で過ごすのです。

臆病なスチュアートもその一人、心優しい彼はトイレで常連のホームレスに「これでなんか食べなよ」とお金を与える。しかし、彼は怖い形相で「俺が憐れに見えるのか?俺に施しが必要なのか?」と睨みつける。しかし、「ははん、ジョークだよ。ありがたく貰っておくぜ!」と冗談をかます。同僚はそんな彼らに振り回されながらもゆるくやっているのだ。つまり、ここにいる職員は図書館員としての顔と同時にソーシャルワーカーとしての顔を持ち合わせているのだ。もちろん、そんな状況をよく思っていない人もいる。市民から苦情が入り、役人から「どうにかしろ」と言われ苦境を立たされているのも事実だ。スチュアートは板挟みに苦しみながらも図書館の治安維持に務めていた。

決してここに来るホームレスはバカなんかではない。デヴィッド・クローネンバーグの『スキャナーズ』からシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』までを共通言語のようにしてコミュニケーションを取り、自分なりのポリシーもあるのだ。それをユーモラスにエステベスは魅せていく。

やがて、事件は起きる。ホームレスの一人が凍死してしまうのだ。確かに、ホームレスの為の避難所は存在する。しかし、そこはあまりにも劣悪だ。かといって当然ながらファストフード店なんかでは追い出されてしまう。酷寒の状況で生きられるわけがない!ホームレス軍団は抗議として図書館を占拠し始めるのだ。指を咥えている間に、図書館から出られなくなった職員たち。外では、警察や役人、マスコミが集結する。スチュアートはそんなホームレスたちの熱量に感化されて、共に闘うことを決意する。

メディア戦略のために、外で寝っ転がって、ホームレスが置かれている状況をアピールし始めるのだ。一方で、同僚は過激なこの騒動にドン引きする。

確かに、本作はロサンゼルス・タイムズの記事を読んでしまうと弱いところがある。記事では、ニュージャージー州のパトロンの働きかけで、体臭による入館制限が適用され非難に晒された話を掘り下げ、客観的な法律の目線と主観的な臭いの目線を鋭く分析し批判している。そして、病院ですらシェルターになれない状態であることについても言及している。そして、このエッセイに登場する人物の多くが想像するだけでも背筋が凍るような人ばかりだ。あなたがもし図書館を利用していて、近くにこのような人がいたら嫌悪を抱かずに過ごすことができるのかと思うくらいの強烈な人物しか出てきません。

エミリオ・エステベスの心優しさが仇となり、クリーンアップされたホームレスが問題を訴える為、現実の問題と少し乖離してしまっている印象は受ける。

しかし、それでも『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』でサラッと語られたホームレスの扱いに対する哲学を掘り下げ、熱い人間ドラマへと仕上げたエステベス監督の力量には脱帽します。サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼を通じて喪失感を癒していく『星の旅人たち』の力強さに引き続き好感持てる作品でした。
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