『The Short History Of The Long Road』その道はダニー・トレホへ続く

ザ・ショート・ヒストリー・オブ・ザ・ロング・ロード(2020)
The Short History Of The Long Road

監督:アニ・サイモン・ケネディ
出演:サブリナ・カーペンター、スティーブン・オッグ、ダニー・トレホetc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』評でも書きましたが、アメリカでは近年ジェントリフィケーションにより車中暮らしが強いられているケースが急増している。地価や家賃があまりにも高すぎて、車中で暮らさないといけないのだ。そんなアメリカの車上暮らしの過酷さを描いた『The Short History Of The Long Road』を観た。ディズニーチャンネルドラマ『ガール・ミーツ・ワールド』出身で、近年では『トールガール』の狂言回し役等映画での露出も増えているサブリナ・カーペンター主演。彼女演じるヒロインが流れ着く車の整備工場のおっちゃん役をダニー・トレホが務める作品だ。予告編を観て興味を抱いたので挑戦してみた。

『The Short History Of The Long Road』あらすじ


For teenage Nola (Sabrina Carpenter), home is the open road. Her self-reliant father (Steven Ogg) is her anchor in a life of transience. The pair crisscross the United States in a lovingly refurbished RV, relishing their independence and making ends meet by doing odd jobs. A shocking rupture, though, casts Nola out on her own. She makes her way to Albuquerque, New Mexico, in search of a mother she never knew. When her motorhome unexpectedly breaks down, she forges a bond with an auto body shop owner (Danny Trejo), and senses the possibility of mooring her ship in this storm.
訳:ティーンエイジャーのノーラ(サブリナ・カーペンター)にとって、家はオープンロード。彼女の自立した父親(スティーブン・オーグ)は、彼女の一過性の人生のアンカーとなっている。二人は愛情を込めて改造されたRV車でアメリカを横断し、独立を喜び、変な仕事をして生活の糧を得ている。しかし、衝撃的な破局は、ノーラを勝手に追い出してしまう。彼女は知らない母親を求めてニューメキシコ州アルバカーキに向かう。思いがけずモーターホームが故障した彼女は、自動車整備工場のオーナー(ダニー・トレホ)と絆を深め、この嵐の中で船を係留する可能性を感じ取る。
※『The Short History Of The Long Road』公式サイトより引用

その道はダニー・トレホへ続く

果てなき道をキャンピングカーで突き進むノーラとその父。

父はよく「次は何処へ行こうか?」

と彼女に尋ね、まるで夫婦のような関係を持っていた。自由奔放な旅はノーラにとって若干の違和感を抱きながらも、それなりに人生を謳歌していた。映画館へ忍び込んで暫く見たら、隣のスクリーンに忍び込み3D映画を楽しみ、フードコートでピザを食べる。同年代の女の子同士ワイワイガヤガヤ楽しむことに憧れは抱くが満足していた。しかし、そんな彼女に不幸が押し寄せる。突然、父が運転中にぐったりと倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまうのだ。

残されたのはキャンピングカーのみ。

何処へでも行けるが、留まることはできない。

金もアテもない彼女は、ひたすら追い立てられながら自分の居場所を探していくのだった。

本作は、そんな彼女のヒリヒリするような旅を、美しき演出の中で紡ぎ出す。ガソリンスタンドで、飢えに苦しみホットドッグを大量購入(ひょっとすると万引きしようとしていたのかもしれない)しようとする彼女に、おばさんが近づいてきて、「あなた、どこ出身なの?」と訊かれる。彼女は狼狽するのだが、江戸川コナンのように目線をズラす。すると視界にエナジードリンクが映り、「あッアリゾナです。」と答える。このカットの動き一つとっても無駄なく繊細である。

彼女は大きなペットボトルにいれた灯りを頼りに、外の世界を拒絶し自己の孤独を潤していく。そんな彼女の周りを彷徨うヒッピーや不良が醸し出す不穏な空気。そしてなんとか居場所を見つけても関係がすぐに壊れてしまう様から、社会とかけ離れた世界で暮らす若者にとってあまりに難しい居場所の作り方にいたたまれない気持ちとなってくる。そんな彼女はやがて、ダニー・トレホ演じる男に拾われ、車の整備工場で働くこととなる。そこに頻繁に現れる家出少女(Jashaun St. John)と仲良くなり、図書館に通ったりし、段々と居場所をができてくるのだ。

ただ、残念ながら本作は予告編以上の驚き、あらすじ以上の驚きはなかった。居場所を探し、そして見つけるというシンプルな話に収斂した結果、彼女の終点である車の整備工場の場面にドラマがなく、ただ点から点へ移動させた程度の物語となってしまったのだ。もちろん、ダルデンヌ兄弟系の作品のように苦境に立たされた主人公を荒ぶるカメラワークの中で捉え続け、貧困に問題提起するのが正しいやり方だとは思っていない。そして、本作はショットの一つ一つが印象的で素晴らしいのだが、悪い意味でインスタ映え映画の域を出ない作品だった。

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