レ・ヴァンピール 吸血ギャング団(1915)
Les Vampires
感想:ルイ・フイヤード
出演:ミュジドラ、エデュアール・マテ、マルセル・レヴェスクetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
『死ぬまでに観たい映画1001本』の鬼門である417分の長尺サイレント映画『レ・ヴァンピール 吸血ギャング団』。数年前にブルーレイを購入するものの、ずっと積んだままだったので、夏休みを利用して完走しました。本作は、ルイ・フイヤードが製作したシリアル(連続活劇)であり、今のテレビシリーズの原点とも言える作品です。
『レ・ヴァンピール 吸血ギャング団』あらすじ
仏の女優・ミュジドラがグラマラスな悪の化身を演じたスリラー映画の先駆け的1作。“吸血鬼(ヴァンピール)”という名の犯罪組織と、それを調査する新聞記者、フィリップ・ゲラントの戦いを描く。
※Amazonより引用
アクション映画の原石
本作はルイ・フイヤードの『ファントマ』シリーズと比べると空間の活かし方が弱く、中盤まで退屈な展開が続く。それでもアナグラムや暗号描写は今観ても新鮮なものがあり、女盗賊Irma VepがVampireのアナグラムであることを解説するストップモーションアニメは新鮮だったりする。また、第3話で、男が整列された文字を眺め、左上→右上→左下→右下→左上2番目→右上2番目…といった具合に文字を並べ、文章を浮かび上がらせる演出には「どんな文章が浮かび上がるのか?」といったワクワク感があります。
そして、何と言っても第9話が素晴らしい。それまではミュジドラのパイプ降りしか見応えがなかったアクションシーンに華が咲きます。マイケル・ベイ級の大砲爆撃に、忍び寄る車を振り払おうとするカーチェイス。部屋に設置された爆弾を巡るサスペンスを扉の内側/外側の切り返しでスリリングに描写したり、試合には挟み撃ちを回避すべく、列車の屋根に乗りアクションを展開する。今や『ミッション:インポッシブル』や『007』シリーズでお馴染みとなっているあらゆるアクションの原石がここにあるのです。
サイレント映画時代は、今とは違い(クリストファー・ノーラン等の一部の映画監督は別として)大きな撮影機を用いて映画製作しなければならなかった。カメラを動かすのは大きな労力がかかる。また、当時は舞台や写真の翻訳の要素が強かった為、カメラを動かすことで躍動感を演出する技法が未発達だった。そこに突破口を見出し、『ファントマ』以上のスペクタクルを演出して見せた点、本作は『死ぬまでに観たい映画1001本』に掲載される意義があります。
そんな本作は、ヒッチコックや時を超えてオリヴィエ・アサイヤスの『イルマ・ヴェップ』に影響を与えている。確かに、ルイ・フイヤード的俗っぽさ退屈さはあるのだが、一生に一度観る価値のある作品でありました。
ルイ・フイヤード記事
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