『フレンチ・コネクション2』言葉と文化の壁による尊厳の喪失

フレンチ・コネクション2(1975)
French Connection II

監督:ジョン・フランケンハイマー
出演:ジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ベルナール・フレッソンetc

評価:100点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、長年観ず嫌いしていた『フレンチ・コネクション2』を観ました。不朽の名作と言われる1作目は、電車アクションシーンは好きですがそこまで嵌らなかった。それだけにずっと、スルーしていたのですがヒョコんなことから何気なく観てみたら、これがとてつもなく面白かったので感想を書いていきます。

『フレンチ・コネクション2』あらすじ


アカデミー賞5部門受賞作の続編。前作で麻薬組織のボスを逃がしてしまったポパイことドイル刑事は麻薬ルート壊滅のため、フランスに乗り込む。しかし彼は敵の組織によって麻薬を打たれ、中毒の身に。必死のリハビリを経て、ポパイは再び立ち上がるが……。監督は交代したが、スピーディな演出やアクションの迫力は決して前作に劣っていない。
映画.comより引用

言葉と文化の壁による尊厳の喪失

本作は、刑事物、アクション映画の文脈で語られがちだが、本作は言葉と文化の壁による尊厳の喪失を描いた作品だと言える。逃した麻薬王・シャルニエを追ってマルセイユに赴任してきたポパイことドイル刑事。しかし、現地の待遇は悪く、彼のオフィスは厠の隣。おまけにフランス語を話そうとしない彼はフランス語ファーストの現地人から相手にされない。そして、彼は捕獲作戦に参加するものの、銃すら持たせてくれず、ドンパチが始まっているのを指を咥えながら見守るしかできないのだ。段々と嫌気がさして彼は酒に溺れるようになる。何故か、映画はドイル刑事がバーで閉店まで呑んだくれている様子を延々と映し始める。近くの席にいたギャルにナンパを始めるが、フランス語がわからないので、バカにされる。そしてマスターに英語で愚痴を言いながら、ウイスキーを浴びるように呑むのです。

いくら、ニューヨークで敏腕鬼刑事だとしても、言葉や文化が通じないと無能になってしまう。そして、彼の素性を知らぬ者は、思わずバカにしてしまう。この構図は、カタコト日本語しか話せず、尚且つ言葉や文化の壁でヘマばかりする外国人労働者が実は祖国で優秀な学生、学者だったり、後に政治を動かす大物だったりすることと似ている。コミュニケーションが取れないだけで、路傍の石として朽ちていくしかない絶望を本作はシニカルに描いているのだ。

ドイル刑事は、シャルニエ一味に嵌められて薬物中毒にされてしまう。独房に入れられた彼は、中毒にもがき苦しみながら自分の半生を振り返っていくのですが、心身ボロボロになりながら、本当は野球選手になりたかったと語り始めるところには涙が出てきます。ただ、センチメンタルだけに留まる作品ではありません。なんたって監督は、ジョン・フランケンハイマーなのだから。

すっかり狂人になったドイル刑事がシャルニエ一味を炙り出すために建物にガソリンを巻き散らし、大炎上させる場面では、建物の空間的魅力を最大限活かしたアクションが展開される。そして炎のアクションから、水のアクションへと転換していく様子は、監督の美学を感じさせます。そして、これは更生映画なんだよと言わんばかりに、クライマックスは延々とドイル刑事が道路を走る、時にFPS視点で走る様子が映し出されるどうかした展開へと発展していきます。

こういう作品を観ると、今の筋肉パワー映画はいささか綺麗すぎるなと思ったりする。荒くれが、社会に適応できずにもがき苦しむ様子と、アクションの面白さを増し増しで凝縮してみせた本作は特大ホームランと言えよう。

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