『浅田家!』写真家の決断を二宮和也が好演!

浅田家!(2020)

監督:中野量太
出演:二宮和也、黒木華、菅田将暉、風吹ジュン、妻夫木聡etc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

湯を沸かすほどの熱い愛』、『長いお別れ』と日本を代表とするヒューマンドラマ作家となっている中野量太が二宮和也主演に、実話を基にした作品が製作された。それが『浅田家!』である。本作は東日本大震災も扱うセンシティブな内容だが、果たして彼はどのように描くのか?TOHOシネマズ新宿で観てきました。

『浅田家!』あらすじ


様々なシチュエーションでコスプレして撮影するユニークな家族写真で注目を集めた写真家・浅田政志の実話をもとに、二宮和也と妻夫木聡の共演、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督のメガホンで描いた人間ドラマ。4人家族の次男坊として育ち写真家になった主人公・政志を二宮、やんちゃな弟をあたたかく見守る兄・幸宏を妻夫木が演じ、家族の“愛の絆”や“過去と今”をオリジナル要素を加えつつ描き出す。浅田家の次男・政志は、父の影響で幼い頃から写真に興味を持ち、やがて写真専門学校に進学。卒業制作の被写体に家族を選び、浅田家の思い出のシーンを再現した写真で学校長賞を受賞する。卒業後しばらくはくすぶっていたものの、再び写真と向き合うことを決意した政志が被写体に選んだのは、やはり家族だった。様々なシチュエーションを設定しては家族でコスプレして撮影した写真で個展を開催し、写真集も出版され、権威ある賞も受賞する。プロの写真家として歩み始めた政志は、全国の家族写真の撮影を引き受けるようになる。しかし、2011年3月11日、東日本大震災が発生。かつて撮影した東北に住む家族のことが心配になった政志は被災地に足を運ぶが、そこで家や家族を失った人々の姿を目の当たりにする。
映画.comより引用

写真家の決断を二宮和也が好演!

中野量太監督はお涙頂戴感動ドラマ作家であるのだが、よくみると意地悪な作りをしている。『湯を沸かすほどの熱い愛』後半で突如現れる宮沢りえの暴力的なシーン。『長いお別れ』で常時家族がチクチク嫌がらせをするあたりに殺伐としたものがある。この殺伐があるからこと感動が強まると監督の信念を感じるのだが、他の監督と比べるとアクが強いと思う。個人的に『ミッドサマー』みたいなカルトを描いた作品を撮ったら化けそうだなと感じる程。

さて、今回も例に漏れず嫌らしいシーンが畳みかける。序盤、父・浅田章(平田満)がキッチンで倒れている。包丁で足を傷つけたらしく、血だらけになっている。息子が救急車を呼びに行くのだが、弟は転倒して鼻血を出す。連鎖的に兄は階段から落ちて、4針縫う惨事となる。この血の連鎖がドス黒いブラックコメディとして映る。そして、浅田政志(二宮和也)の人生にフォーカスがあたるのだが、画面には彼の年齢が表示され、実績が出せずヒリヒリとした空気が張り詰める辛辣さを盛り上げる装置として機能する。写真の専門学校をなんとか卒業した彼だが、パチンコに明け暮れるニートになりさがる。そんな彼に痺れを切らした兄・浅田幸宏(妻夫木聡)は「俺は働いて、毎月家にお金入れているんだぞ。」と言う。通常であれば、この弟のクズさを表現するために、そこで喧嘩に発展するのだが、政志は「俺、15万入れたよ。パチンコで勝ってな。」と嫌らしい返しをするのです。中野節相変わらず全開である。だが、そんな彼も心の中では年齢という焦りがある。若さを武器にできる20代も終わりに近づき、彼は上京して売り込みをするのだが、なかなか上手く行かない。彼の幼馴染・川上若奈(黒木華)の手も借り、個展を開き、それきっかけで出版にこぎつけるが、全然本が売れないのだ。この辛酸が、後半の東日本大震災場面に活かされる。

彼の辛い道が大きな賞を獲ったことで拓けていく中で東日本大震災が発生する。心騒つく彼は被災地へ赴き、写真を届けるボランティアを始める。そこで出会った少女から、「私の父を探して、あの人も探してもらっているじゃん」と言い寄られる。そこで政志は、ビジネス的態度を取るのだ。無償の領域を超えてしまっている、ボランティアの領域を超えて責任が生じる。その案件は受けられないと断る。すると、「家族写真は?本に書いてあったよ。家族写真撮りますってね。」と交渉をしはじめる。彼女の住んでいた場所を訪れる。しかし、そこは瓦礫の山となる。そこで魅せる二宮和也の演技に深みがある。写真家として、この恐ろしい破壊は画になるし、撮るべきだという気持ちはある。しかしながら、こうも悲惨な状況をカメラに撮ってよいのだろうか?ましてや彼にとって写真は物語だ。被写体のドラマを吸収しないと写真が撮れない性格。それ故に衝撃が強すぎるこの大惨事を撮るのは精神的に辛い。唇を噛み締めて、彼は決断する。この写真家としての倫理観は、冒頭から積み重ねてきた笑いあり辛さありの轍を丁寧に描くことで説得力持ったものとなっている。

二宮和也はもっと演技できるはずなので、序盤のクズ描写にもう少し注力してよいのではと思いつつも、毎作レベルアップしていく中野量太監督への好感度高まる作品でありました。

※映画.comより画像引用

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