レ・ミゼラブル(2019)
Les Misérables
監督:ラジ・リ
出演:ダミエン・ボナール、ジャンヌ・バリバール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
昨年のカンヌ国際映画祭で長編デビュー作にして審査員賞を受賞、さらにはアカデミー賞国際映画賞ノミネートにセザール賞最優秀賞作品賞を受賞した『レ・ミゼラブル』は、ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』舞台であり、今や犯罪地区となっているモンフェルメイユ地区を舞台に白人警官とバンリューの移民たちの闘いを描いている。フランスのスパイク・リーと噂されているラジ・リ監督作品がようやく日本公開されたので新宿武蔵野館で観てきました。割と現代フランス社会を色濃く批判した政治映画にも拘らず満席続出の大盛況となっていました。
『レ・ミゼラブル』あらすじ
ビクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」で知られ、現在は犯罪多発地区の一部となっているパリ郊外のモンフェルメイユを舞台に、現代社会が抱えている闇をリアルに描いたドラマ。モンフェルメイユ出身で現在もその地に暮らすラジ・リの初長編監督作品で、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。第92回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートもされた。パリ郊外に位置するモンフェルメイユの警察署。地方出身のステファンが犯罪防止班に新しく加わることとなった。知的で自制心のあるステファンは、未成年に対して粗暴な言動をとる気性の荒いクリス、警官である自分の力を信じて疑わないグワダとともにパトロールを開始する。そんな中、ステファンたちは複数のグループが緊張関係にあることを察知するが、イッサという名の少年が引き起こした些細な出来事から、事態は取り返しのつかない大きな騒動へと発展してしまう。
※映画.comより引用
七十人の侍vsジャヴェール警部
貴方はバンリューをご存知だろうか?バンリューとは、パリから少し離れた公共住宅街で低所得層の人が住む地域である。そして、そこには数々の話題が眠っており『かごの中の子供たち』、『憎しみ』、『ディーパンの闘い』と見応えある作品が作られてきた。そんなバンリューですが、ここ10年で大きな変貌を遂げたと2016年のドキュメンタリー『スワッガー』は語る。フランスなのに、今や移民しかそこで生活していないというのだ。フランスにいながらフランスではない世界がそこにあるというのです。
フランスでは、2015年のシャルリーエブド襲撃事件による抗議デモ、2018年に燃料価格上昇、貧富の格差を広げるエマニュエル・マクロン大統領の税政策により市民が声を上げ暴動に発展した黄色いベスト運動と、市民の区分が分断化され、目には目を歯には歯をと暴力で暴力を制す社会となった。特に、2018年11月17日の黄色いベスト運動では500人以上の負傷者を出し、警察官も100名以上負傷、死者まで発生する事態となった。
ラジ・リ監督は、バンリューの人々を見下す警察官とそれを見守る新入りの視点で暴力の応酬を描くことで、フランスの暴走する革命精神を鋭く批判している。
クリスは、長年モンフェルメイユ地区を監視してきた警察官。俺のシマだと言わんばかりに横暴な取り調べをしている。そんな彼の下に配属されたステファンは、彼の無茶振りシゴキに耐えながら、この地区を観察している。そんな中、サーカスのライオンの赤ちゃんが誘拐される事件が勃発。犯人は少年イッサだとわかるのだが、仲間のグワダはうっかりゴム弾でイッサを吹っ飛ばしてしまう。運が悪いことにそれは、ドローン少年に現場を撮られてしまった。怒りに震えるキッズは、『七人の侍』張りの壮絶な復讐を企画する。
「『七人の侍』じゃダメだ!権力に立ち向かうなら『七十人の侍』でなきゃ」
というフランスの荒ぶる怒りの暴走をスタイリッシュなドキュメンタリータッチのカメラワークで映し、緊迫した音楽が盛り上げる。権力者である警察官も一人の人間である。良心や恐怖心は持っている。暴力による戦争はああ無情なんだと映画は叫んでいるのです。カンヌ国際映画祭作品にありがちな、社会批判が目的化し映画的快感が失われた作品に陥ることなく、笑いあり興奮あり、戦慄ありのエンターテインメントに仕上がっておりラジ・リ監督の今後が楽しみである。
最後にこの引用で締めくくるとしよう。
《Mes amis, retenez ceci. Il n’y a ni mauvaises herbes ni mauvais hommes. Il n’y a que de mauvais cultivateurs. – Victor Hugo”Les Misérables”》我が友よ、これを覚えておいてくれ。雑草も悪人もいないのだ。悪しき農民だけがいるのです。-ヴィクトル・ユーゴー(レ・ミゼラブル)
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