【ネタバレ考察】『映像研には手を出すな!』齋藤飛鳥にボゥと燃やされたい!

映像研には手を出すな!(2020)

監督:英勉
出演:齋藤飛鳥、山下美月、梅澤美波、小西桜子、グレイス・エマetc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

漫画、アニメ、ドラマ全てが傑作な今年最重要作品『映像研には手を出すな!』の映画版観てきました。今回はネタバレありで語っていきます。

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『映像研には手を出すな!』あらすじ


アニメ制作を志す女子高生3人組の青春を描き、2020年1月からは湯浅政明監督によるテレビアニメ版もNHKで放送された大童澄瞳の同名コミックを、人気アイドルグループ「乃木坂46」の齋藤飛鳥、山下美月、梅澤美波の共演で実写映画化。湖に面した芝浜高校。人見知りだが監督としてすぐれた素質をもつ浅草みどり、カリスマ読者モデルでアニメーターの水崎ツバメ、金もうけが好きなプロデューサー気質の金森さやかは、「映像研究同好会」を結成し、自分たちが思い描く“最強の世界”を描くためアニメーション制作を開始する。「アニメは設定が命!」が信条の主人公・浅草みどりを齋藤、俳優である両親に反対されながらもアニメーターを目指すお嬢様・水崎ツバメを山下、2人の才能をまとめ、管理し、金もうけをしようとするプロデューサータイプの金森さやかを梅澤が演じる。そのほか、小西桜子、福本莉子、桜田ひより、浜辺美波ら人気の若手女優も共演する。監督は「乃木坂46」とは映画「あさひなぐ」でもタッグを組んだ英勉。
映画.comより引用

齋藤飛鳥にボゥと燃やされたい!

英勉は福田雄一と並び茶番の監督として忌避されるが、個人の見解としては福田雄一=内向きな文化祭、英勉=外向きな文化祭の構図となっている。前者は、業界ないし自分さえ面白ければ良いという点のギャグを並べる傾向が強く、それが映画よりも知らない人しかいない文化祭に紛れ込んでしまった居心地の悪さを感じてしまう。英勉の場合は、ギャグを線として描き、またフレームの内側/外側を意識した映画的演出をしているので同じ茶番文化祭映画でも英勉の味方をしたくなる。

さて、『映像研には手を出すな!』である。アニメ版が「漫画をアニメに翻訳する」を完璧にこなし最強の世界を生み出したのに対し、実写は、線描画やゴリゴリのCG、CGに寄り添う実物を織り交ぜることで、アニメという媒体を捉えようとした。そして、あらゆる部活を登場させ、それら群が織りなすグルーヴ感が独特な面白さを生み出し、原作を読めば反感を抱くであろう乃木坂46の配役も、ドラマ喉元過ぎれば、彼女にしかあの役は無理であろう説得力を持っていた。

今回の映画版は、たしかに少々残念な出来栄えだ。ドラマ版の復習パートは、余分な茶番を上塗りしているせいで鈍重に感じるし、膨大過ぎるキャラクターを扱いきれず、唐突に出ては消えを繰り返し、描き込みが弱い為終盤に伏線だと言わんばかりに登場しても、「あんた誰?」感が強い。英勉監督としては、ドラマ版で登場させた膨大な部活を「合併」させる展開で群れの動きによる面白さを見出そうとしていたのかもしれない。しかしながら、声帯模写部、気象部、替え玉受験を考える会といった名ばかり部活を並べただけではただモブキャラを右から左に交通整理しているだけである。映画はテトリスではないと言いたい。

また、サブカルネタも物語のキーとなるのがマニアック過ぎる且つ、そのエピソードがなくても物語が成立してしまうのでノイズとなっている。気象部が、生徒会から逃げるように箱を落とし、そこからピュー子たる人工台風が現れる。このネタはドラえもんの「フー子」であるのは言わずがな。しかしながら、どれだけの人がフー子のことを知っているのだろうか?パロディとはそのネタが知っていることが前提となっている。そして、例え知らなくても面白さが伝らなければ意味がありません。今回の場合、台風が原因で水崎ツバメ(山下美月)の両親が文化祭に来るという伏線に繋がっているのだが、それにピュー子が入り込む余地はないと思われる。ただの台風で事足りることだし、もしそれでもピュー子を登場させたいのであれば、気象部が映像研積極的に介入すべきである。

もちろん、うまくいっているパロディも存在する。それは浅草みどり(齋藤飛鳥)が水崎ツバメと仕事をもらいに窓口へ行く場面。『はじめてのおつかい』のナレーションで、彼女たちの珍道中が描かれる。『はじめてのおつかい』は老若男女が知っている特番である。またそれを知らなくても、彼女たちの珍道中を盛り上げるには十分な荒唐無稽さがある。『はじめてのおつかい』にありがちな道草描写、挫折に姉妹愛が描かれるのだが、そこに「車で窓口に行く」というお金で解決してしまうオチがつく。水崎ツバメは一貫して、富に頼らないお嬢様というキャラクターをになってきたが、ここで例外的に破るという演出に巧さを感じる。それ以外の部分では、ドラマも映画版もそのキャラクター像を崩さないから際立つ良さだ。

また映画版ならではの面白さを追求しているところも評価すべきポイントである。本作では、漫画、アニメ、ドラマになかった《音》の側面にフォーカスを当て、官能的な装置捌きでロボットの音を大スクリーンに叩きつける演出がある。地下の音響施設で音を完成させる。実際に音を聴く。するとガランとした地下施設に彼女たちは移動する。地下空間の反響が重いロボットの金属音を盛り上げ、観客も《音》という存在を意識せざるえなくなる。単にドラマを映画館で上映しているだけではないことを英勉監督は証明してみせたのだ。

本作は問題山積みで、映画として弱い部分が多い困った作品であるが、齋藤飛鳥演じる浅草氏が、アニメ的口調で縦横無尽に駆け回る場面や、グレイス・エマの目力、クライマックスでフレームの外側にアニメの感動を配置する上手い逃げ方には脱帽します。

こうも御託を並べた訳だが、私が一番言いたいのはこのことである。

「齋藤飛鳥にボゥと燃やされたい!」
※映画.comより画像引用

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