第70回ベルリン国際映画祭 金熊賞はイラン映画『Sheytan vojud nadarad』

第70回ベルリン国際映画祭受賞結果

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今朝、第70回ベルリン国際映画祭受賞結果が発表されました。今年のベルリンは、作品選定プロデューサーが変わり、カンヌ寄りなラインナップとなっていました。確かにここ数年のベルリンの質は悪く、批評家評判が壊滅的なのですが、それでも大御所だらけのラインナップには悲しさがあります。やはり映画祭は新鋭を発掘する場だと思っているので、しかし今回の受賞結果は、新鋭発掘に長けた結果となっていました。それではみていきましょう。

金熊賞:Sheytan vojud nadarad(There Is No Evil)

監督:モハマド・ラスロフ

今回の金熊賞はイランのモハマド・ラスロフ監督作品『Sheytan vojud nadarad』でした。モハマド・ラスロフは昨年のナダブ・ラピド監督同様、映画超人・済藤鉄腸さんが紹介している新鋭である。彼は日本ではあまり知られていませんが、カンヌ国際映画祭ある視点部門の常連で『グッドバイ』は監督賞、スペシャルメンションを、『Dast-neveshtehaa nemisoosand 』は国際批評家連盟賞、『Lerd』はある視点映画賞を受賞している。そんな彼の新作は、死刑と倫理に纏わる4つの物語を繋げたもので、以前と厳しい政治状況であるイラン情勢を反映した作品の模様。アカデミー賞国際映画賞にもノミネートできそうなポテンシャルを持っている作品であります。

東京国際映画祭の矢田部さんもイチオシなようなので、TIFFで観られるかもしれません。

銀熊賞(審査員賞):Never Rarely Sometimes Always

監督:エリザ・ヒットマン

『ブルックリンの片隅で』で日本でも紹介されているエリザ・ヒットマンの新作。望まぬ妊娠をしてしまった少女がニューヨークに旅する内容。矢田部さん曰く、映画祭には少女の妊娠を扱った作品が多数出品され辟易とするのだが、それでも本作での女優の演技が素晴らしいと褒めていました。日本公開期待の作品です。

銀熊賞(監督賞):ホン・サンス(Domangchin yeoja※The Woman Who Ran)

カンヌの常連にして、極私的映画、毎回ファンムービー故、賞とは無縁だったホン・サンスがなんと監督賞を受賞しました。今回のホン・サンスもミニマムな作品で、旧友を訪ね歩き会話するだけなのに、相変わらず魅力的な作品に仕上がっているようです。

銀熊賞(女優賞):ポーラ・ビール(Undine)

監督:クリスティアン・ペツォールト

『Never Look Away』、『婚約者の友人』のポーラ・ビールが『未来を乗り換えた男』に引き続き、クリスティアン・ペツォールトと組んだ作品。水の精霊ウンディーネの物語を現代に置き換え、恋人に振られた女性が新たな恋を育むまでの大人のラブストーリーとなっています。

銀熊賞(男優賞):エリオ・ジェルマーノ(Volevo nascondermi※Hidden Away)

監督:Giorgio Diritti

イタリアの画家アントニオ・リガブーエの伝記映画『Volevo nascondermi』で主演を演じたエリオ・ジェルマーノが男優賞を受賞。スイスからイタリアへ追放された彼が、貧困、孤独に苦しみながら絵に対する情熱を注いだ作品とのことです。

銀熊賞(脚本賞):Favolacce(Bad Tales)

監督:D’Innocenzo兄弟

『ドッグマン』の脚本を手がけたD’Innocenzo兄弟監督2作目。ローマ郊外で崩壊していく家族を描いた作品。

銀熊賞(芸術的貢献賞):DAU. Natasha

監督:Ilya Khrzhanovskiy, Jekaterina Oertel

今回のベルリン国際映画祭最大の問題作。ノーベル賞受賞の物理学者レフ・ランダウを中心にスターリン時代を描く映画プロジェクトの1つだが、どうやら1万人以上のエキストラを巨大セットに2年間住まわせ、そこで撮影を敢行したのだが、心身双方の虐待が撮影中にあったのではと疑われ、上映前から問題となっていた作品。日本で果たして観られるのか?少なくとも矢田部さんの動向から、東京国際映画祭には来なそうですが…

銀熊賞(70th Berlinale):Effacer l’historique(Delete History)

監督:Benoît Delépine, Gustave Kervern

ベルリン国際映画祭70回記念賞に輝いたのは、ソーシャルメディアの犠牲になった人がIT企業に戦いを描く現代劇です。

終わりに…

前評判で高評価を獲得したケリー・ライヒャルトの『First Cow』こそ無冠に終わりましたが、割と順当に賞が決まったかなというのが初見です。大御所の作品こそ多数ノミネートされていましたが、新鋭を発掘していこうというベルリンの姿勢は変わることがありませんでした。とりあえず、『DAU. Natasha』が観たいです。

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