初恋(2019)
First Love
監督:三池崇史
出演:窪田正孝、大森南朋、染谷将太、小西桜子、ベッキー、三浦貴大etc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
三池崇史は、いつもは『ラプラスの魔女』や『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』といった白羽の矢が立ったような色物映画を作っているのですが、数本に一度『十三人の刺客』のような本当に撮りたかった作品を製作する。そして今回の三池崇史映画はまさしく《彼が本当に作りたかった映画》である。原作は存在せず、久しぶりの三池崇史オリジナル作品です。これがなかなか面白かった。
『初恋』あらすじ
三池崇史監督が窪田正孝を主演にメガホンを取った自身初の恋愛映画。天涯孤独の身で類まれな才能を持つ天才ボクサーの葛城レオは、試合でまさかのKO負けを喫し病院へとかつぎこまれた。医師から自分の余命がわずかであるという事実を突きつけられ、自暴自棄になりながら歌舞伎町の街を歩くレオの目に男に追われる少女モニカの姿が飛び込んでくる。ただごとではない様子からレオが反射的にパンチを食らわせた男は、ヤクザと裏で手を組む悪徳刑事・大伴だった。モニカは親の虐待から逃れるため歌舞伎町に流れ着き、ヤクザにとらわれていたという。レオは彼女を救うことを決意するが、その選択はレオがヤクザと大伴から追われる身となることを意味していた。レオ役を窪田、大伴役を大森南朋、モニカ役をオーディションで選ばれた新人の小西桜子がそれぞれ演じるほか、内野聖陽、染谷将太、ベッキー、村上淳、滝藤賢一、ベンガル、塩見三省らが顔をそろえる。
※映画.comより引用
ベッキーの覚醒!これぞ三池崇史流エクスペンダブルズだ!
みなさん、ベッキーをご存知でしょうか?
平成ボーイにとってはお茶の間の華のような存在でした。しかし、2016年に《ゲスの極み乙女。》のヴォーカル川谷絵音との不倫報道により、彼女の地位は一気に失墜。一応はテレビに復帰したものの、かつての華やかさは失われてしまった。どうも日本は、一度地に堕ちた人にチャンスを与えず、とことん潰す風潮が強い。確かに、不倫はいけないとは思うが、不倫ごときでここまで堕とす必要があるのか?とは思うし、芸能人が罪を償うのなら、それは芸で償うべきだと思っている。さて、地に堕ちたベッキーに三池崇史は手を差し伸べました。映画に出ないかと。確かに既に白石和彌だって『麻雀放浪記2020』で一足早く彼女に手を差し伸べているのだが、映画が茶番を極めた作品だった為、彼女を羽ばたかせることに失敗していたと言える。しかしながら、本作は映画としても面白く、尚且つベッキーに眠る能力を最大限まで引き出すことに成功している。
三池崇史は、ブライアン・デ・パルマやアベル・フェラーラ同様、俗を極めし者。その俗の極みが唯一無二の作家性となりスパイスとなっている。ボクサー、ヤクザと麻薬売買で手を組むこととなった刑事、そして薬物中毒者の風俗嬢が複雑に入り混じる物語の中で、ベッキー演じる狂人女は立っているだけで怖いオーラが滲み出ている。麻薬中毒で、裸のおっさんが見える幻覚と戦っている怯えた女(小西桜子)と対比する様に暴力的で、目が豹の様に鋭いベッキー。彼女が、バールのようなものを持ち迫り来る様はコミカルで面白いかつ得体の知れない恐怖があります。
また三池崇史は、ベッキーだけではなく、他の役者からも個性を引き出しまくっている。悪徳刑事と闇取引を持ちかけるヤクザを演じた染谷将太は、冷めた口調で話しているのだが、そのスカした口調が二流のヤクザ感を醸し出している。そして窮地に追いやられると、慌てた猫の様な俊敏さと甲高い声で叫ぶ。この動きの強弱に魅了される。またボクサー役の窪田正孝は、『東京喰種 トーキョーグール』で培われた、草食系男子に見えて強いという微妙なパワーバランスを今回も体現している。
確かに映画としてはVシネマ感全開、癖のある作品で、物語としても若干鈍重なところがあるのですが、これぞジャパニーズ・エクスペンダブルズだ!と言えよう。ひょっとすると日本よりも世界の方が評判高い作品かも知れませんね。
日本公開は、2020/2/28(金)です。
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