【考察・未体験ゾーンの映画たち2019】『ディアマンティーノ』サッカーから読み解くポルトガルのコンプレックス

ディアマンティーノ 未知との遭遇(2018)
Diamantino

監督:ガブリエル・アブランテス、ダニエル・シュミットetc
出演:カルロト・コッタ、フィリッピ・バルガスetc

評価:65点

今年もやってきました未体験ゾーンの映画たち!ヒューマントラスト・シネマ渋谷で毎年開催される、ゲテモノ、ワケあり映画の祭典だ。地雷作も多いのだが、意外な作品を拾ってくれるので毎年楽しみにしています。今年のお目当は、2018年カンヌ国際映画祭監督週間でグランプリを受賞したポルトガル映画『ディアマンティーノ 未知との遭遇』。批評家が意味不明な怪文レビューを挙げていたことで映画超人・透明ランナーさんが注目していた作品。ポルトガル映画ではあるのだが、監督が『デ・ジャ・ヴュ』でお馴染みスイスの鬼才ダニエル・シュミットという意外性もありブンブンも注目していました。まさか、日本で公開されるとは思ってもいなかっただけにこれは嬉しい!公開初日に観てきました。

『ディアマンティーノ 未知との遭遇』あらすじ

ポルトガルサッカー代表選手ディアマンティーノは天才的プレイと美貌で人気を誇っていた。彼には秘密があった。集中力が高まるとスタジアムがワンコの世界に変わるのだ。その幻想的世界が、彼からスーパープレイを引き出すのだ。そんな彼が、ワンコの幻影を観なくなった時、奇妙な地獄旅が幕を開けるのだった…

サッカーからポルトガルのコンプレックスを読み解く

本作は、噂通りキテレツな作品であった。プロサッカー選手のディアマンティーノという人が、相当なワンコフェチで、試合中にワンコの幻影を見ることによってスーパプレイを生み出すという設定だけでも、ちょっと何言っているのか分からないのに、フェリーニ映画がごとく次々とビザールな出来事が押し寄せてくる。ディアマンティーノが、難民と出会ってしまったことから、自分のプレイに集中できなくなり、引退する。そして、モザンビークから移民を受け入れるのだが、その移民は、彼のマネーロンダリングの証拠を掴もうとするスパイで裏工作が始まる。そして、ディアマンティーノの邪悪な姉妹は、政府のプロパガンダ計画に加担するため、ランボールギーニ博士と結託してディアマンティーノのクローンを作ろうとする。まるで、海外児童小説の世界のようなコミカルさと自由な作風に唖然とさせられます。

しかしながら、じっくり観ていくと、これが非常に奥深いのだ。本作は、サッカーのスーパープレイヤーの失墜とポルトガル史を結びつける非常にユニークな視点から、現代ポルトガルのコンプレックスを明らかにしています。ポルトガルは、かつて世を轟かせる大国であった。それこそ、日本に鉄砲を伝えたくらい活発に外交活動をしていた。しかし、今となっては、ヨーロッパ界のルイージ。地味の極みとなっている。そして常にEU情勢に振り回されている。そんな栄枯盛衰を、サッカープレイヤーが堕ちぶれ、ドンドン無になっていく様子に重ね合わさっていくのだ。そこに、さらにスパイスとして現代ポルトガル人の叫びが木霊する。本作で、政府関係者は叫ぶ。「EUに振り回され貧乏になった。ここは高い高い壁を作って対処すべきだ!」。昔はよかった、今はダメだ。昔を取り戻そうとし、プロパガンダとして、無知なディアマンティーノを起用する。日本からは見えてこない、ポルトガルの魂の叫びをこの混沌から見ることができる。

年間ベストに入れる程の傑作ではないのだが、未体験ゾーンの映画たちに相応しいビザールな作品でした。

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