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【ネタバレ解説】『ブリグズビー・ベア』は『そして父になる』であり『万引き家族』だ!

【ネタバレ解説】『ブリグズビー・ベア』は『そして父になる』であり『万引き家族』だ!

ブリグズビー・ベア(2017)
Brigsby Bear(2017)


監督:デイヴ・マッカリー
出演:カイル・ムーニー、マーク・ハミル、
グレッグ・キニアetc

評価:80点

カメラを止めるな!』が話題沸騰中の中、密かに盛り上がりを見せているもう一つの作品がある。それが『ブリグズビー・ベア』だ。地下室に長年監禁され、謎の教育番組《ブリグズビー・ベア》を魅せられ育てられた青年が、いきなり社会に解き放たれ、戸惑いながらも、《ブリグズビー・ベア》の続編を作ろうとする作品。あまりにぶっ飛んだ内容の作品ながら、「泣ける」、「『レディ・プレイヤー1』に続く、映画に救われる傑作だ!」と絶賛の声が相次いでいる。丁度、日曜日に『カメラを止めるな!』を鑑賞するため新宿へ来たので、新宿シネマカリテで観て来ました。面白かったぞ!ってわけで、ネタバレありで本作の魅力について語っていく。

『ブリグズビー・ベア』あらすじ

学校にも通わせてもらえず、地下室で謎の教育番組『ブリグズビー・ベア』を観せられ育てられた青年ジェームスの人生は警察が押し入ったことで突然変わった。実は、親だと思っていたテッドとエイプリルは誘拐犯だったのだ。いきなり再会することとなったホンモノの家族。あまりに大きすぎる世界。そして、明かされる『ブリグズビー・ベア』の正体。ジェームスは環境に戸惑いながらも、新天地でこう決心した。『ブリグズビー・ベア』の続編を撮ろう!果たして彼は『ブリグズビー・ベア』の新作を撮ることができるのであろうか?

盗んだのは《絆》でした…

『サタデー・ナイト・ライブ』の監督であるデイヴ・マッカリー初長編にして昨年のサンダンス国際映画祭で話題となった作品だ。本作は、一見奇天烈なお話に見えるが、実は是枝裕和映画に近い《家族の物語》であった。まず、青年ジェームスが25歳にもなり、仕事もせず《いないいないばぁ》のような教育番組を熱心に研究しているところから物語は始まる。そして、いきなり警察がこの歪な空間に押し入り、ジェームスが倒錯的な夫婦によって誘拐されたことを知るのだ。

かくして、ホンモノの家族と再会するジェームス。家族は中流階級でなんでも望みは叶えてくれるし、制限もない。しかし、ジェームスは偽の家族の温もりを忘れることができず、思い出の『ブリグズビー・ベア』の続編を作ろうとするのだ。

そう、本作は『そして父になる』であり、『万引き家族』だったのだ。

想像以上にハードな物語

予告編を観ると、一見ポップな作品に見えるが、実際は胸倉を掴まれるようなキツイ映画だ。なんたって、冒頭で、『ブリグズビー・ベア』の一部を魅せられ、観客はジェームス同様。カルトな臭い漂うこの傑作に惹き込まれる。しかし、その世界をいきなり壊してしまうのだ。なんと、『ブリグズビー・ベア』は誘拐犯の父親が作った番組だったのだ。でも、冒頭でジェームスは『ブリグズビー・ベア』の研究サイトで仲間と交流している。あれはなんだ?と思っていたら、あれも夫婦の自作自演だったことが分かるのだ。あまりにキツすぎる辛すぎるのだ。また、ジェームスがその偽の教育番組の面影を引きづって、その続編を作ろうとしている時の悲壮感に満ちた家族の表情があまりに辛すぎて泣けてくる。本作は、殺傷能力100%の劇薬だったのだ!

しかし、本作には《新たなる希望》がある

こういう話は大抵、全編お葬式ムードで、重く、お涙頂戴に作られるもの。泣かせる場面ではじっくり時間を費やし、「ここ、泣き所ですからねー」とシーンが観客を煽ってくるものだ。しかしながら、本作は全くそういう作りになっていない。まず、とにかくテンポが良いのだ。削り過ぎなぐらいテンポよく話が進み、ついさっきまで妹と仲が悪かったはずなのに、すぐに打ち解け、ついさっきまで無免許だったのに、何故か運転している。『ブリグズビー・ベア』出演者との再会シーンは伏線も何もなしに訪れ去っていく、気がつけば『ブリグズビー・ベア』の続編が完成しているのだ。泣かせるなんて1mmも考えていない作りに好感を抱く。そして、何よりも主人公ジェームスが異様なほどに希望しか抱いていないのだ。両親だった人物が偽物だと分かり、彼らが刑務所に入れられても彼は悲しんだりしない。普通の人だったら発狂するであろう『ブリグズビー・ベア』の正体を聞かされても、「やったぜ!やっぱりあの人が作者だったんだ!サイコーだ!」と叫ぶ。『ブリグズビー・ベア』の小道具が警察に押収されているのなら、警察官を説得し始めるし、なんだかよく分からないパーティでは浮いていてバカにされているにも関わらず勇猛果敢に飛び込み、友達を作る。しまいには、女の子と初体験までキメてしまうのだ。そして、『ブリグズビー・ベア』の「諦めちゃだめだ!」という熱いメッセージを一瞬たりとも絶やすことなく走り抜けていく。あまりに清々しいのだ。そして、一歩前に踏み出せない我々を勇気付けてくれる。まさに《新たなる希望》だ。

異物とどう接するのか?

本作は正直『ワンダー 君は太陽』より高いレベルにいる作品だ。どちらも、当事者を描いているように見せかけて、異物に対する周りの心情を描いた作品だ。『ワンダー 君は太陽』はトリーチャーコリンズ症候群の特殊メイクに明らかな《逃げ》があり、異物感が希薄なものとなってしまった。一方、本作のジェームスは明らかに「頭がおかしい異物」として見える。ブンブンだって彼の動きを観て、最初は本能的拒絶反応を示した。普通の家庭、社会に入ってきた全く未知の異物。最初こそ、周りは拒絶するのだが、希望に満ち溢れたジェームスの行動が、人々に纏わりつく《常識》《法律》といった蔦を取り払っていくのだ。

現代社会。《常識》《法律》が全てを支配しているが、取りこぼされてしまう人がどうしてもいる。そういう人を救うのは最終的に人情なのだ。そう、本作は本当に観たい『万引き家族』だったのだ。

マーク・ハミルに注目

最後になるが、本作は何と言ってもマーク・ハミルの使い方が素晴らしい。誘拐犯の男を演じているのだが、彼の『ブリグズビー・ベア』に取り憑かれた男という設定はまさにマーク・ハミル自身を象徴している。『スター・ウォーズ』シリーズに取り憑かれ、『スター・ウォーズ』の世界に閉じ込められてしまった彼自身なのだ。そして本作で、マーク・ハミルを『スター・ウォーズ』愛もって雁字搦めになった蔦から解放してあげる。デイヴ・マッカリー初長編にしてトンデモナイ作品だ。大傑作ではないか!

ってことで日曜日は『カメラを止めるな!』と併せて大満足な日でした。

おまけ:すしらーめん《りく》に観て欲しい!

本作の中盤で、ジェームスが撮影で爆薬を爆発させ、警察のお縄になる場面がある。本作を観て、日本のYoutuberが世界に勝った!と思った。数年前から、すしらーめん《りく》というYoutuberをブンブンは応援している。彼は、他のYoutuberとは違い、決して企業や組織に媚びることなく、純粋に面白い動画を作ろうとするあまり、マイケル・ベイを彷彿とする爆破動画を量産した方だ。彼のひたむきに真っ直ぐな姿勢は本作のジェームスに近いものがある。

現在、大学デビューし、スランプになってしまった為か活動を休止しているが、彼に是非『ブリグズビー・ベア』を観て欲しいと思った。また活動再会して欲しいなー。ブンブンは全力で彼を応援します!!

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