CPH:DOX

2021映画

【CPH:DOX】『A MAN AND A CAMERA』許可なく人を撮ってみたww

カメラを持った男Guido Hendrikxは田舎町を彷徨う。そして街行く人をカメラで捉え続ける。当然ながら、撮られている方は困惑する。「何をしているのだ?」「これは何かのドッキリなのか?」「これにどういう意味があるのか?」人々は彼に問いかける。しかし、彼は沈黙したままでカメラを向け続ける。

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【CPH:DOX】『ボストン市庁舎』ワイズマンが贈る崩壊する民主主義への処方箋

ブルータリスト建築の無骨なボストン市庁舎に始まり、ボストンの街のどこかドライな建築を巧みに挿入しながら、都市から政治、市民へと微分を重ねていくことで人の営みの重要な要素を抽出していく。マーティ・ウォルシュ市長は、限られた予算の中でボストンの中にある様々な問題を解決しようとしている。癌やアルコール中毒といった厳しい境遇を乗り越えてきた彼は対話を重視しており、労働者やマイノリティ、韓国系、プエルトリコ系といった人種のコミュニティとの議論の場を設けて傾聴する。看護師のストライキ会場にも足を運ぶ。障がい者支援団体に訪問した際には、自らエプロンを身につけ、給仕を行ったりしている。さらには大麻薬局のオーナーにすら議論の場が設けられていたりするのだ。

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【CPH:DOX】『暴力をめぐる対話』「わきまえている」の暴力性

昨年、フランスで話題になったドキュメンタリー『Un pays qui se tient sage』がCPH:DOXにて配信されていたので観ました。本作は、黄色いベスト運動を収めたドキュメンタリーである。タイトルは2018年12月に151人もの高校生が警察官に拘束された際に、警察官が「ほらな、わきまえているクラスだろ(Voilà une classe qui se tient sage)」と言ったことに由来している。マクロン大統領の富裕層優遇政策により、貧困層に対しての無関心さが露呈し、燃料税の増税がきっかけとなって始まった黄色いベスト運動は、市民と警察の激しい暴力の応酬となっている。本ドキュメンタリーでは、様々な人が黄色いベスト運動における暴力性を多角的に分析している。かなり物議を醸している映画らしく、日本語で簡単な感想を書いた自分のレビューに英語やフランス語でクソリプがつくほど熱気がある作品となっている。折角観たので感想を書いていく。

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【CPH:DOX】『バッハマン先生の教室』6年B組バッハマン先生

驚いたことに、AC/DCの若干ヨレた服を着てダラんと座りながら授業をし始めるのです。確かに海外の学校はラフな姿で授業をするイメージが多いのですが、それにしてもユルすぎるだろうと思わずにはいられない。そして、生徒との間合いの詰め方も独特でどこか教祖のような怪しさもある。生徒も退屈そうに授業を聞いている。音楽の授業では、生徒たちに楽器を習得させて、いざ発表のタイミングになると、我先にヴォーカルを担当し、渋い歌声を轟かせている。大丈夫だろうか。私とバフマン先生の出会いは良いとはいえなかった。

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【CPH:DOX】『Tina』A Fool in Love

ティナ・ターナーといえば、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「プラウド・メアリー」のカバーが有名であろう。囁くような語りから始まり、波のようにバックコーラス、時に観客とRollingを連呼していく。そして、ある一定のラインで爆発し、疾風怒濤観客を波に飲み込んでいくパワフルな演出はインパクト大。あのグッチ裕三も教育番組ハッチポッチステーションにて「どんぐりころころ」の替え歌として本曲を選ぶほどの名曲であります(子ども向け番組でやる内容ではない)。映画ファン目線からすると、『Tommy/トミー』でロジャー・ダルトリー演じる聴覚/視覚を失った男をヤク漬けにするAcid Queen役や『マッドマックス/サンダードーム』の女支配者アウンティ・エンティティ役で知られている。

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【CPH:DOX】『GUNDA』ソクーロフに映画のノーベル賞を与えたいと言わせた男による豚観察日記

小屋から大きな豚の顔がひょっこりと見える。豚は熟睡しているようだ。すると、一匹、また一匹と豚の赤ちゃんが出現し、大きな豚の周りで暴れ出す。授乳の時間だろうか。大きな豚はよろよろと起き始める。子豚は乳に貪欲だ。無数の子豚がひしめきあいながら親豚の乳を吸う。相当体力を使うのか、親豚はぐったりと横わる。SNSをひらけば、バズりたい一心で動物の赤ちゃん動画が拡散されている。本作では、研ぎ澄まされた色彩の中で豚の赤ちゃんが映し出されるのだが、終始禍々しいものを感じる。大抵、その嫌な予感というものは当たるものである。