評価

2021映画

【アカデミー賞】『83歳のやさしいスパイ』倫理の壁を超えてみたww

妻をなくしたばかりのセルヒオは、新聞の求人を見て面接に励む。この事務所ではスパイを募集しているのだ。経歴や機械に対するリテラシーなどのヒアリングが行われ、セルヒオはスパイに就任する。彼の任務は老人ホームに潜入し、依頼主の母親が虐待されていないかどうかを調査することだった。老人ホームに無断で内情調査するのは法律的に問題ないのだろうか?そういう観客の疑問を先回りして、事務所は「合法だ」と言う。かくして老年の新人スパイ・セルヒオのミッションが始まった。

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【CPH:DOX】『GUNDA』ソクーロフに映画のノーベル賞を与えたいと言わせた男による豚観察日記

小屋から大きな豚の顔がひょっこりと見える。豚は熟睡しているようだ。すると、一匹、また一匹と豚の赤ちゃんが出現し、大きな豚の周りで暴れ出す。授乳の時間だろうか。大きな豚はよろよろと起き始める。子豚は乳に貪欲だ。無数の子豚がひしめきあいながら親豚の乳を吸う。相当体力を使うのか、親豚はぐったりと横わる。SNSをひらけば、バズりたい一心で動物の赤ちゃん動画が拡散されている。本作では、研ぎ澄まされた色彩の中で豚の赤ちゃんが映し出されるのだが、終始禍々しいものを感じる。大抵、その嫌な予感というものは当たるものである。

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『三月のライオン』将棋は指さないが、画は刺す

『三月のライオン』はカルト的人気を博するのも納得だ。全ショットが完璧であり、映画とは「画」で語るものだと観客に殴りつけてくる。由良宜子演じるアイスは、記憶喪失のハルオ(趙方豪)を連れ出す。社会というしがらみから逃れるように自由に生きるアイスにとって、ハルオ以外は空気のような存在だ。街中でパンツを脱ごうとも気にはしない。そんな、自由の快楽に溺れている彼女の誘惑に引き込まれて行くハルオだが、彼は「社会」という重力に引っ張られて工事現場の仕事につく。

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【Netflix】『AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは』複製された偏見

MITメディア・ラボで学ぶジョイ・ブオラムウィーニはSFから着想を得て作品制作を行う課題に顔認証技術を採用する。しかし、黒人である彼女の顔は中々認識してくれない。調査をする中で、女性よりも男性、有色人種よりも白人の方がAIは認識しやすい事実に辿り着く。肌の色が違うぐらいなら物理法則に当てはめれば容易に認識してくれそうなものなのにどうしたことか?ここから彼女の探求の旅は始まる。その中で様々な研究者がAIに潜む偏見の存在に気づきはじめていることを知る。AIは膨大な情報を解析するだけだ。その情報が誤っていれば、誤った結果が出力される。これは意図しないところで起きたりするのだ。

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『犬は歌わない』生類憐れみの令は反射する

ライカは生存の保証がないまま宇宙に飛ばされ、地球史上初めて地球を周回した動物になった。映画は、そのライカの魂が今のロシアの犬たちに引き継がれているかのようにロシアの野良犬の生活が映し出される。本作はソ連の宇宙開発に関するドキュメンタリーとしてみると肩透かしを食らうことでしょう。

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【Netflix】『スピードキューバーズ: 世界を見据えて』神童たちの友情、努力、勝利の方程式

そんなルービックキューブ界に神童がいた。フェリックス・ゼムデグスだ。彼は幼少期にルービックキューブに取り憑かれ、次々と世界大会の栄冠を勝ち取り、世界記録を幾つも持っている人物だ。しかし、2017年に彼を脅かす存在が現れた。マックス・パークだ。youtubeに片手でルービックキューブを揃える男の動画が出現した。フェリックスは挑戦してみたが、この謎の男のスピードには勝てなかった。やがて彼は表舞台に現れる。マックス・パークは淡々と大会を勝ち進んでいき、フェリックスの世界記録を次々と破り始めるのだ。そんな彼にもドラマがある。彼は自閉症を患っていた。彼に幸せになってほしいと願う家族は様々な方法を試す中でルービックキューブに手応えを感じる。自閉症の人が難しいとされる行動、人を指差しする、人の行動に合わせるといったことが大会を通じて身についていく。そこに家族は嬉しさを感じる一方で、いずれ訪れるであろう挫折や敗北をいかに処理していくのかを不安視していた。

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【アカデミー賞】『76 DAYS』あの時、武漢で……

現場は混乱していた。未知のウイルスによりロックダウンした武漢で、医者たちは限られた人員、限られた物資、慣れない防護服で次から次へと現れる人たちの面倒をみないといけなかった。父に会いたい者もいる。しかし、立ち入りは厳重に管理されており、人情を捨てて冷徹に連れ出さないといけない。その極限状態に市民はフラストレーションを抱えていた。