『黒牢城』死の予兆から逃れる

黒牢城(2026)

監督:黒沢清
出演:本木雅弘、菅田将暉、吉高由里子、青木崇高etc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

カンヌ国際映画祭に黒沢清初の時代劇『黒牢城』がお披露目となった。彼にしては珍しく、上映時間が2時間半近くある超大作で、あまりの意外性にピンと来なかったのだが、映画祭での評判が非常に高く、なんだったら是枝裕和『箱の中の羊』の代わりにコンペティション部門に入っていたら何か賞を獲っていたのかもしれない。遅ればせながら観てきたのだが、アルベール・セラ『リベルテ』を彷彿とさせる一本であった。

『黒牢城』あらすじ

「スパイの妻」「クリーピー 偽りの隣人」などで国内外から高く評価されてきた黒沢清監督が自身初の時代劇に挑み、第166回直木賞と第12回山田風太郎賞をダブル受賞した米澤穂信による同名ミステリー小説を映画化。

荒木村重は織田信長の暴虐なやり方に反発して謀反を起こし、有岡城に立てこもる。織田軍に包囲され孤立無援となった城内で、村重は血気盛んな家臣たちを抑えつつ、妻・千代保を心の支えに、城と人々を守ろうと苦心していた。そんな中、城内で少年が殺害される事件が起こり、その後も怪事件が続発する。容疑者は密室と化した城内にいる家臣や身内の誰かで、城外には敵軍、城内には裏切り者という状況に、誰もが疑心暗鬼に陥っていく。追い詰められた村重は、信長の使者として説得に訪れ牢に囚われた天才軍師・黒田官兵衛に協力を仰ぎ、事件の解決に挑む。

城主・荒木村重を本木雅弘、天才軍師・黒田官兵衛を菅田将暉、村重の妻・千代保を吉高由里子、村重の腹心・荒木久左衛門を青木崇高、若手の家臣・乾助三郎を宮舘涼太(Snow Man)、事件の目撃者である狙撃の名手・雑賀下針を柄本佑、村重の隠し刀として暗躍する郡十右衛門をオダギリジョーが演じる。2026年・第79回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門出品。

映画.comより引用

死の予兆から逃れる

織田信長に謀反を起こし有岡城へ立て籠もった荒木村重。しかし、城内で殺人事件が発生してしまう。城の中に織田信長サイドのスパイがいると疑った彼は死の恐怖を抱えながら打開策を練っていく。

本作は黒澤明『影武者』に近い城内心理劇として機能しており、複雑な政治関係を城内といったミクロな領域で描いていく。だが、黒沢清なので一筋縄にいかない時代劇、ミステリーとなっており、むしろこれらのジャンルの特性を無視していくスタイルとなっている。それはどこかアルベール・セラ映画に近いものがあり、すぐそばに死はあれども決定的な死は訪れず、間延びした時間の中で精神がすり減っていく様の映画として仄暗い城内が活用されている。本作が面白いのは、厭世にならずに以外にも生の渇望の話へと転がっていき、豊かなロングショットがこの独特な物語を盛り上げている点にある。そこまで乗れなかったものの、イメージの作り込みに惹き込まれたのはたしかである。