『僕らの世界が交わるまで』ジェシー・アイゼンバーグ初長編監督作

僕らの世界が交わるまで(2022)

監督:ジェシー・アイゼンバーグ
出演:ジュリアン・ムーア、フィン・ウルフ、ハードアリーシャ・ボー、ジェイ・O・サンダース、ビリー・ブリック、エレオノール・ヘンドリックス、ジャック・ジャスティスetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『Manodrome』でジェシー・アイゼンバーグへの関心が高まったので、勢いで長編監督デビュー作の『僕らの世界が交わるまで』を観た。ジェシー・アイゼンバーグは実存をめぐる葛藤のドラマに出る傾向があるだけに、本作もその流れを行く作品となっていた。

『僕らの世界が交わるまで』あらすじ

「ソーシャル・ネットワーク」「ゾンビランド」シリーズなどの俳優ジェシー・アイゼンバーグが長編初メガホンをとったヒューマンドラマ。アイゼンバーグがオーディオブック向けに制作したラジオドラマをもとに自ら脚本を手がけ、ちぐはぐにすれ違う母と息子が織りなす人間模様を描く。

DV被害に遭った人々のためのシェルターを運営する母エブリンと、ネットのライブ配信で人気を集める高校生の息子ジギー。社会奉仕に身を捧げる母と自分のフォロワーのことで頭がいっぱいのZ世代の息子は、お互いのことを分かり合えず、すれ違ってばかり。そんな2人だったが、各々がないものねだりの相手にひかれて空回りするという、親子でそっくりなところもあり、そのことからそれぞれが少しずつ変化していく。

「アリスのままで」のジュリアン・ムーアが母エブリン、ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シリーズのフィン・ウルフハードが息子ジギーを演じた。「ラ・ラ・ランド」「クルエラ」の俳優エマ・ストーンが製作に名を連ねる。

映画.comより引用

ジェシー・アイゼンバーグ初長編監督作

部屋に引きこもりライブ配信をすることで承認欲求を満たすジギー。家族は彼のことを心配しながらも、なかなか腹を割って話すことができない。真面目な母エブリンはDV被害にあった人のためのシェルターを運営しており、人の面倒を見るのは得意なように見えるが、息子とどう接したら良いのか分からない。そんな二人の葛藤を仄暗い空間の中描いていく。両者は場所によりペルソナを変えており、それが妙に生々しい。特にジギーは、ライブ配信時こそ自分を良く見せようとするが、それが終われば暗いオーラを纏う。そんな停滞を描いていく。正直、ジェシー・アイゼンバーグが演じるこの手の作品は『恐怖のセンセイ』をはじめとし、トリッキーな演出の中で自問自答を魅せ、それが面白かっただけに、予想の域を出ない本作は肩透かしを食らった。しかし、監督は1作目に全てを込めるとよく言われるように、彼の演技の核となるものが映画として外部化されたといった点では重要な作品といえよう。

2024年のサンダンス映画祭では監督2作目”A Real Pain”が出品される。犬猿の仲である従兄弟と、叔母を偲ぶポーランド旅行で再会をする内容とのこと。スケールアップした作劇に期待である。

※映画.comより画像引用