【東京国際映画祭】『ゴンドラ』ゴンドラという舞台装置で何ができるのか?

ゴンドラ(2023)
Gondola

監督:ファイト・ヘルマー
出演:マチルデ・イルマン、ニニ・ソセリア

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第36回東京国際映画祭コンペティションにファイト・ヘルマー新作『ゴンドラ』が選出された。ファイト・ヘルマーは『ブラ物語』が年間ベスト級に素晴らしかったので期待していたのだが、今回も大傑作であった。

『ゴンドラ』あらすじ

『ツバル TUVALU 』(99)、『ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を』(18)など、台詞を一切使わない独特のスタイルで知られるファイト・ヘルマーの最新作。ジョージアの美しい山の中を運行するロープウェイで働くふたりの女性の関係をファンタジックな映像で描く。

第36回東京国際映画祭サイトより引用

ゴンドラという舞台装置で何ができるのか?

ファイト・ヘルマーは「運動」のスペシャリストであり、『ブラ物語(ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を)』もサイレントかつブラジャーの持ち主を探すシンプルな作品であったが豊かな手数を示していた。『ゴンドラ』では、フドイナザーロフのゴンドラ映画『コシュ・バ・コシュ』へのラブレターとなっており、山と山を結ぶゴンドラを使って何ができるかひたすら探求する内容となっている。

もし貴方が厨二病であれば、ゴンドラとゴンドラとの間で銃撃戦が行われることを期待するであろう。それも折り込みで水鉄砲による銃撃戦が行われる。ゴンドラで対岸に行くたびにチェスのコマを動かす、ゴンドラのに網を伸ばしてフルーツを取ったり、車椅子を繋げて運んだりする。ゴンドラの上に乗ってコインを撒く、ゴンドラごと看板に突っ込む。考え得るあらゆるパターンをユーモラスに提示していくこの一発芸大会に魅了された。

何よりも、ゴンドラを改造してゴンドラ以外の乗り物にしていくのだが、しまいにロケットへと変貌させてしまうところには爆笑であった。一日の最後を締めくくる最高のデザート映画であった。

第36回東京国際映画祭関連記事

【東京国際映画祭】『開拓者たち』マカロニウエスタンで南米史を撃つ
【東京国際映画祭】『湖の紛れもなき事実』ラヴ・ディアスの超スローモーション刑事もの
【東京国際映画祭】『正欲』YouTube時代にクローネンバーグ『クラッシュ』が作られたら……
【東京国際映画祭】『鳥たちへの説教』バイダロフ「説教」煉獄編
【東京国際映画祭】『曖昧な楽園』曖昧な地獄
【東京国際映画祭】『左手に気をつけろ』映画を知ると映画の外側に行けなくなる
【東京国際映画祭】『小学校~それは小さな社会~』解体新書:日本の小学校
【東京国際映画祭】『西湖畔に生きる』グー・シャオガン、スピリチュアルなスコセッシ説
【東京国際映画祭】『わたくしどもは。』豊穣な空間で我思う
【第36回東京国際映画祭】『駒田蒸留所へようこそ』ウイスキー復活への道
【東京国際映画祭】『私たちの世界』コソボ、大学には入ったけれど

※第36回東京国際映画祭サイトより画像引用