くすぶりの年代の記録(1975)
Chronique des années de braise
監督:モハメッド・ラクダル=ハミナ
出演:ヨルゴ・ボヤジス、モハメッド・ラクダル=ハミナ、レイラ・シェナetc
評価:50点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
新宿K’s cinemaにて開催されている奇想天外映画祭2023にて非常に珍しい作品が上映されている。それが『くすぶりの年代の記録』だ。これは1975年のカンヌ国際映画祭にて最高賞パルム・ドールを受賞したアルジェリア映画だ。入手難易度が非常に高く、確かにインターネットにはあるにはあるが観るに耐えられない画質だったりする。海外ルートでもほとんど遭遇することのない作品なのだが、なぜか今映画館で観られる状況にあるのだ。Wikipediaでは邦題が『小さな火の歴史』となっていたこともあり(これは私が加筆修正した)、ステルスレベルが高い。よく気づいたなと我ながら思う。早速K’s cinemaで観てきた。
『くすぶりの年代の記録』あらすじ
アルジェリア建国の苦難の歴史を『灰の年』『荷車の年』『くすぶりの年』『虐殺の年』という4つのテーマに分けて、1954年のアルジェリア独立戦争までを描いた3時間の壮大な歴史ドラマ大作。随所に登場するストーリーテラー“Mad Man Man”はアルジェリアの歴史を突飛な言葉で語りかけていて奇興味深い。アルジェリアの無機質な岩山や砂漠を捉えた撮影が素晴らしい。
※K’s cinemaより引用
幻のパルム・ドール受賞作
狂言回しのような存在ミルを中心にアルジェリア戦争が起きるまでの過程を本国側の目線から描く。広大な大地の中で人々は慟哭する。やがて搾取に抵抗するため、武器を出す。ちっぽけだったり錆びれた武器で戦えるのか自問自答しながらもテロを引き起こしていく。街では軍が不気味に包囲する。搾取される側の痛みは茹だるような暑さの大地、または廃墟の中で叫ぶことで葛藤が強調されていく。正直、似たようなショットが多く3時間が冗長に感じた。この年のカンヌ国際映画祭のラインナップには『Electra, My Love』や『田園に死す』、『侠女』といった傑作はあれどもパルム・ドールっぽい作品は少なかったように思える。またアルジェリア戦争の傷跡が記憶に新しい時代もあり、政治的受賞なのではと思った。モハメッド・ラクダル=ハミナ監督はアルジェリア戦争やフランス植民地時代を描いた作品を他にも作っており、『Crépuscule des ombres』や『Le vent des Aurès』あたり観る機会があれば触れてみたいところだ。ちなみに、日本国内劇場初上映とあるが字幕が故・寺尾次郎なので、大昔にアテネ・フランセあたりで上映されたと思われる。
※MUBIより画像引用