グランツーリスモ(2023)
Gran Turismo
監督:ニール・ブロンカンプ
出演:デヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルーム、アーチー・マデクウェ、ジャイモン・フンスーetc
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
『第9地区』のニール・ブロンカンプ新作が人気レースゲーム「グランツーリスモ」と聞いて驚くと共に納得した。ニール・ブロンカンプは実はデヴィッド・クローネンバーグ的側面を持ち合わせており、一貫して機械による肉体強化ないし人類の進化を描いてきた監督だからだ。デヴィッド・クローネンバーグもレース映画『ファイヤーボール』を描いている。金属の塊と肉体感覚をシンクロさせていき、速さに対する欲動を描いているのだが、それはまさしく『グランツーリスモ』にも通じるものだろう。本作はただのレース映画ではない。「グランツーリスモ」のチャンピオン、つまりゲーマーがリアルのレースに参加するといった内容。そして、これが実話ものだとのことだ。ヴァーチャルとリアルで区別されがちであるが、段々とその境界線がなくなってきており、仮想空間での経験が物理空間の中でも現実として受け入れられるような世界でどのように熱いドラマが紡げるのか。実際に劇場でウォッチしてみたところ、これが素晴らしい作品であった。
『グランツーリスモ』あらすじ
世界的人気を誇る日本発のゲーム「グランツーリスモ」から生まれた実話をハリウッドで映画化したレーシングアクション。
ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に熱中する青年ヤン・マーデンボローは、同ゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーとして育成するため競いあわせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の存在を知る。そこには、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足した男ダニーと、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。想像を絶するトレーニングや数々のアクシデントを乗り越え、ついにデビュー戦を迎える彼らだったが……。
主人公ヤンを「ミッドサマー」のアーチー・マデクウィ、GTアカデミーの設立者ダニーをオーランド・ブルーム、指導者ジャックをデビッド・ハーバーが演じる。監督は「第9地区」のニール・ブロムカンプ。実在のヤン・マーデンボローがスタントドライバーとして参加している。
ゲーマーが鬼教官を乗り越えル・マンに立つまで
本作は、3時間近くあるのではと思うほどに盛りだくさんの内容となっている。「グランツーリスモ」の優秀なプレイヤーを育成して本物のレーサーへと育てるプロジェクトが立ち上がる。レーサーになりたくても金や育ちの関係でなれない人が多い。そんな社会に夢を与えようとする目的があった。無謀ともいえるこのプロジェクトに情熱を燃やす男ダニー(オーランド・ブルーム)と悲しい過去を持つ元レーサーのジャック(デヴィッド・ハーバー)が狭き門を突破したゲーマーを育成する。映画は育成編、ライセンス取得編、ル・マン24時間耐久レース編に分かれているのだが、どれも濃密な内容となっている。
主人公のヤン・マーデンボロー(アーチー・マデクウィ)は成功への切符を手にしたが大人しめの性格であることから期待はされていなかった。実際に、本プロジェクトを広告屋の立場から取り組むダニーは、彼の採用を躊躇していた。しかし、厳しい試練を乗り越えてレーサーへの切符を手にする。すると、あれだけ厳しかったジャックが頼れる仲間になるのだ。ゲーマーがレーサーになることについて社会は快く歓迎はしてくれない。なんだったら、仲間であるエンジニアですら罵倒を投げつけてくる。そんな厳しい環境において、ジャックだけが心の拠り所となってくるのだ。
終盤ではル・マン24時間耐久レースが待ち構えているのだが、そこにはかつてのライバルも味方として駆けつけてくる。まさしく友情・努力・勝利のジャンプ漫画的展開に熱くなるし、映画を観ていく内にあれだけ嫌な奴だったジャックの人情と情熱溢れるアドバイスや行動に泣けてくるのだ。
一方で、肝心なレースシーンが編集で誤魔化されていたような場面が多く、もったいないなと感じたが、終始胸躍るハラハラドキドキさせられる一本でありました。
※主役を演じたアーチー・マデクウィが虎杖悠仁に見えたのがツボだった。Netflix等で『呪術廻戦』が実写化したら、虎杖悠仁はアーチー・マデクウィで決まりだろう。
※映画.comより画像引用