【MUBI】『Century of Birthing』ラヴ・ディアスの長い長い創作への葛藤

Century of Birthing(2011)

監督:ラヴ・ディアス
出演:ANGEL AQUINO,ANGELI BAYANI,SOLIMAN CRUZ etc

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

MUBIにはフィリピンの超長尺映画監督ラヴ・ディアス作品が沢山配信されている。超長尺映画特集配信をするため、日本未公開作『Century of Birthing』を観た。これがめちゃくちゃ面白かった。

『Century of Birthing』あらすじ

An artist struggles to finish his work. A storyline about a cult plays in his head: Fundamentalism will destroy the world. The artist’s muse is endangered by his process. Will he redeem her, in the end?
訳:あるアーティストが作品を完成させようと奮闘している。彼の頭の中にはカルト教団のストーリーが流れる: 原理主義が世界を破壊する。芸術家のミューズは、彼のプロセスによって危機に瀕している。果たして彼は彼女を救い出すことができるのか?

MUBIより引用

ラヴ・ディアスの長い長い創作への葛藤

映画監督は、創作に対する葛藤ものを作りがちだ。マルコスやドゥテルテ政権への批判を地方から描いていく作品を多数生み出すラヴ・ディアスが、そのテーマを横に置き自分の創作と向き合う内容にまず驚かされる。彼もそういった映画を作るんだと。本作は入れ子群像劇となっており、彷徨い対話しながら脳内ヴィジョンを形にしていく映画監督を軸に、映画のイメージやカルト教団、カメラマンの物語が編み込まれていく内容となっている。アーティストにとって脳内に完璧なイメージができているが、それを実体化させるのが難しいというのを画郭変更で表現し、ライトに撮った画、バキバキにキメていく画を強調していく演出に惹き込まれる。中には『ゴダールの決別』における、船が去っていく運動と静止する人間を同時共存させるような圧巻の構図もあり、6時間があっという間に感じる。

ストーリー面でいえば、ストーカーカメラマンパートが面白い。モラトリアムに生きる何者でもない男が、情景を撮影している。森の奥には女性たちが洗濯をしながら生きている。その一期一会に興奮し、撮影をしようとするも彼女たちにキレられる。それでもアーティストでありたい欲望がストーカーのように彼女たちを気持ち悪く追い回す。カメラを持つ者の加害性に迫ったこのパートは『フェイブルマンズ』におけるクリエーターの暗部と向き合ったものとなっている。

ラヴ・ディアスからこの観点が出てくるのは凄いなと思った。

※IMDbより画像引用