超長尺映画

2021映画

【超長尺映画】『ベルリン・アレクサンダープラッツ』シン・ベルリン・アレクサンダー広場

ブルハン・クルバニ監督は、ドイツに適応しようとしてアイデンティティが失われていくアフリカ人の肖像を荒々しく画面に打ち付けている。本作では、アンゴラ、モザンビーク、ギニアビサウ、ガーナと様々なアフリカの国名が出てくる。しかし、それは表面的でその国の内部までは描かれない。本作に登場するドイツ人は、国名こそ知っているが最終的に「黒人」に収斂していき、雑にアフリカ人を扱っていく。主人公フランシス(ウェルケット・ブンゲ)は難民としてドイツに流れ着く。必死になってたどり着いたドイツに夢を抱き、少しでも幸せになろうとするが、ドイツ語はできない上に金もビザもないので、怪しげな労働に手を出さざる得なくなる。地の底にいるものにとって「真っ当な人間として生きる」ことは高嶺の花なのだ。そんな彼は、怪しげな男ラインホルト(アルブレヒト・シュッヘ)に惹かれていく。カルト教祖のように黒人の前に現れて電話番号を書いた札をばら撒く彼。明らかに怪しい男であるが、次第にフランシスは彼に取り込まれていき、危険な仕事に巻き込まれていくのだ。そしてドンドンと「真っ当な人間として生きる」ことから遠ざかっていく。代わりに、ドイツで生きる為にフランシスの名を捨て「フランツ」として生きるようになっていく。

2021映画

【超長尺映画】『ハイゼ家 百年』百年の「豊饒な」孤独

問題の30分以上に及ぶ強制移送されたオーストリア系ユダヤ人のリストは体感時間ではなく、本当に30分存在したのだ。従来もクロード・ランズマン『ソビブル、1943年10月14日午後4時』のラストで収容所に収監された人のリストを読み上げられる場面があるが、本作は変わった演出となっている。目の前に映画のエンドロールさながらスクロールされるリストに対して、そのリストとは無関係に見える手紙のやりとりが読まれるのだ。リストの日付も全く関係ない。これはどういうことか。じっくりと観ていくと段々と納得してくる。手紙では段々と社会情勢が悪化し、石炭等の物資が手に入らなくなり、移送の為限られた荷物だけもって家から追い出されていく家族のやりとりが語られていく。そうです。我々は未来の視点から結末を「目」で追い、一方でその悲惨な未来に向かって突き進む様子を「耳」で追っているのだ。