真昼の不思議な物体(2000)
Mysterious Object at Noon
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
出演:タイの村人たち
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
MUBIにアピチャッポン・ウィーラセタクンの初長編監督作『真昼の不思議な物体』があった。彼の作品で流れる時間は独特なのだが、本作もその潮流に乗っているものであった。
『真昼の不思議な物体』あらすじ
監督はタイの国中を旅し、出会った人たちに物語の続きを創作してもらう。画面には、マイクを向けられるタイの地方の人々と、彼らによって語られた「不思議な物体」の物語が、交錯して描かれる。話し手により物語は次々と変容する。それは監督自身さえも予想できない展開を見せていく。
アピチャッポンの奇妙な時空間結合
車に乗りタイの街中を駆け巡る。どこか懐かしい音楽、ゆったりとした時間の中でインタビューは始まる。アピチャッポン・ウィーラセタクンは街中のいろんな人にインタビューをする。その会話の中には映画にするには小さな話でも、当人にとっては大きな話がある。映画はどうしても大きなスペクタクルが多くなってしまうが、現実は小さくて大きな話が沢山ある。それを映画的に掬い取って昇華しようとしている作品に思える。顕著なのは中盤の演劇シーン。ニカっと笑った人たちが、演劇をする。顔は笑っているが、実際には壮絶で悲しい現実の上に立っていることを、首締めのフッテージを挿入することで表現している。画を繋ぎ合わせ、時空間を行き来することで小さな話を掬い上げる。それを映画以外の媒体、ここでは演劇を映画の眼差しから捉えることによって、メディアとしての役割を強調することに成功していると言える。
こうした理屈を一旦横に置いたとしても、終始、どこか不気味な空間の持続が異国への関心を引き立て続ける作品となっているので、観て良かった。
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※MUBIより画像引用