『HOW TO BLOW UP』エコテロリズム映画界の『オーシャンズ11』を観てみた

HOW TO BLOW UP(2022)
How to Blow Up a Pipeline

監督:ダニエル・ゴールドハーバー
出演:アリエラ・ベアラー、クリスティン・フロセス、ルーカス・ゲイジ、フォレスト・グッドラック、サッシャ・レインetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日の2023年上半期ベスト配信でKnights of Odessaさんが「エコテロリズム映画界の『オーシャンズ11』と呼ばれている作品」と紹介していた『How to Blow Up a Pipeline』を観た。普通のテロリスト映画だと思ったらかなり変わった作品であった。

『How to Blow Up a Pipeline』あらすじ

Xochitl’s frustration with the climate crisis leads her to engage in symbolic acts of sabotage and property destruction. With radical determination, she assembles a crew of friends and strangers, each with their own struggles, to undertake a daring mission to destroy a pipeline in West Texas.
訳:気候危機への苛立ちから、彼女は破壊工作や器物損壊といった象徴的な行為に手を染めるようになる。過激な決意を胸に、彼女はそれぞれの苦悩を抱えた友人や見ず知らずの仲間を集め、テキサス西部のパイプラインを破壊するという大胆なミッションに挑む。

MUBIより引用

エコテロリズム映画界の『オーシャンズ11』を観てみた

通常、この手の作品は人間対人間の構図になりがちだ。しかし本作の場合、まるでエベレストに登るかのように自然が敵となる。いや、正確にいえばエコテロリストたちの純粋な目標が敵となる作品だ。要するに、仲間が集まって、爆弾を作ってパイプラインを破壊する過程に異様な尺が割かれているのである。これが非常にスタイリッシュである。薬物を吸っているもの、カウンセリングのようなものを受けているもの、製油所に搾取されたり、それが原因で病を患った者。老若男女、人種も異なる者たちが共通の敵によって結ばれる。そして、互いにできる範囲で爆弾を作ったり、仕掛けを作ったりしながら、いざパイプライン爆破作戦を敢行する。しかし、爆弾をくくりつけようとすると、紐がちぎれそうになる宙ぶらりんのサスペンスが勃発する。画はこの緊迫感を盛り上げるものとなっている。例えば、爆破への強調として、ただのパイプラインの風景をいろんな角度からズームを入れ、数ショット重ねることで躍動を表現している。

配信でもKnights of Odessaさんが言及していたようにケリー・ライカートの『ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画』と比較すると面白い作品となっている。爆破を中心に置き、その前に注力した作品が本作であり、その後に注力した作品が『ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画』といえる。この手の作品は爆破中心に描くのだが、本作は異様に前段階のプロセス、特に爆弾を作る描写に執着している。これにより、主人公たちの理想や目標に向かっていく高揚感が上質に練られたと思う。ただ、流石にこれを観てエコテロリストになろうとは思わないでしょうとも思った。

これは日本公開してほしい傑作であった。

※MUBIより画像引用