河(1997)
原題:河流
英題:The River
監督:ツァイ・ミンリャン
出演:リー・カンション、ミャオ・ティエン、ルー・シャオリン、チェン・シャンチーetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
アリ・アスターが『Beau is Afraid』を作るにあたって参考にした映画リストの中にツァイ・ミンリャン『河』があった。アリ・アスター作品はそこまでなのだが、ガイ・マディン作品や『荒野の千鳥足』を推していたり、『オオカミの家』に惚れ込んで『Beau is Afraid』のアニメパートを彼らに依頼したりと面白いタイプのシネフィル監督だなと思うこのところ。『Beau is Afraid』を観る前に『河』を観てみた。
『河』あらすじ
台北。シャオカン(リー・カンション)は街で旧知の女友達(チェン・シアンチー)と再会。映画スタッフの彼女に誘われ、撮影現場に訪れた彼は、監督(アン・ホイ)に目をつけられ、河に浮かぶ死体役に抜擢されてしまう。彼女と一夜をすごした後、彼は首が曲がったままになる奇病にかかっていた。どんな治療も成果はあがらないが、皮肉にもこの病は崩壊しかかっていた家族の交流をわずかながら復活させた。シャオカンの治療のため、マッサージから霊感商法まで様々な治療を続ける両親。だが、彼らはお互いに孤独ゆえに秘密を抱えていた。母には海賊版裏ビデオを販売している愛人がいて、父はゲイ・サウナに通っていた。気づかぬまま、思いもかけず情交に至ってしまう父と息子……。父と共に訪れた先の祈祷師は、「名医を探せ」と告げるだけだった。シャオカンは首を押さえたまま、ひとり空を見上げる。
あの濱口竜介監督作品の元ネタ?
正直驚いた。冒頭、エスカレーターを降りる者、昇る者が映し出される。あっ!と女の人が振り返りながら男を呼び止め、急いで上がっていく。なんと濱口竜介『偶然と想像』第三話まんまなシーンがあるのだ。『偶然と想像』におけるエスカレーターを使った再会シーンは感傷的な名場面であるが、濱口竜介監督は恐らくこれがやりたかったんだろう。ファーストインプレッションに圧倒された。
とはいえ、いつも通りのツァイ・ミンリャン。セリフは少なめで徘徊する人を描いていく。突然、首に違和感を抱えてしまった男の彷徨いが淡々と描かれていく。映画はなぜかおっさんの肉体関係に発展したり、梅雨にぴったりなジメジメとした空間を意味ありげに映し出していく。正直、よく分からない映画ではあった。とはいえ、序盤の映画撮影シーンにおける死体が死体っぽく見えない描写と主人公が首に違和感を抱き続ける場面をクロスさせることで肉体と精神の不協和音だったり、心理的モヤモヤを浮き彫りにしようとしているのではと読み取れ、このアプローチは興味深かった。
それにしても、アリ・アスターはどのように『Beau is Afraid』で加工するのだろうか?
楽しみである。
※MUBIより画像引用