ホーリー・トイレット(2021)
原題:Ach du Scheisse!
英題:Holy Shit!
監督:ルーカス・リンカー
出演:トーマス・ニーハウス、ギデオン・ブルクハルトetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ポイント・セットさんから一本の試写が舞い込んできた。
目を覚ますと、そこは爆破34分前の仮設トイレだった!
3/3(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開される『ホーリー・トイレット』は、仮設トイレを舞台にした修羅場映画のようだ。実際に観てみたところ、これがとても面白かったので感想を書いていく。なお、本作は、作品の性質上、痛いと汚いが飛び交う文章となっておりますのでご注意あれ。
↑動画版の感想です。
『ホーリー・トイレット』あらすじ
仮設トイレに閉じ込められ絶体絶命の危機に陥った男を描いた、異色のシチュエーションスリラー。
頭部を負傷して意識を失った建築家フランクは、リゾートホテルの建設現場で横倒しになった仮設トイレの中で目を覚ます。記憶が欠落し、状況がよく飲み込めないなか、右腕には鉄筋が突き刺さっており、トイレの周りには大量の解体用ダイナマイトが仕掛けられ、34分後の午後2時ジャストに爆発するということを知る。誰かに助けを求めるか、もしくは自力で脱出しなくてはならないが、身動きは取れない。やがて、友人である市長ホルストの邪悪な思惑が明らかになり、刻一刻と爆発の時間が近づいていく。
仮設トイレの中だけで全編が進行する設定と、過激なブラックユーモアやエログロ描写で世界各国のファンタスティック映画祭で話題を集めた。監督は新人のルーカス・リンカー。
目を覚ますと、そこは爆破34分前の仮設トイレだった!
男は目を覚ます。するとそこは、仮設トイレの中だった。しかし、様子がおかしい。トイレは横に転倒しているし、右腕には太い鉄が刺さっている。しかし、どうしてこうなったかは分からない。すると、外で声が聞こえる。どうやらあと34分でこの一帯は爆破されるとのこと。死のカウントダウンが迫る中、決死の脱出劇が始まる。
良い修羅場映画というのは《不幸中の幸い》の宙吊りのバランス感覚に優れているところにある。修羅場というのは、大抵は不幸だ。しかし、不幸の中に微かなチャンスが見える。藁にもすがるような思い出、そのチャンスにしがみつくが、スルリと不幸へと転がり込んで新たな修羅場が生まれる。そのテクニカルな回転が物語を面白く動かす。
『ホーリー・トイレット』の場合、ご都合主義ともいえる程にフランク(トーマス・ニーハウス)の手元に様々なアイテムが隠されている。狭いトイレにこれでもかとアイテムが仕込まれており、それが巧みに絡み合って、手汗握る脱出劇を盛り上げてくれるのだ。
例えば、目を覚ましたフランクはスマートフォンで外部と連絡を取ろうとする。しかし、スマートフォンは便器の奥底に落ちてしまっている。手を伸ばすが届かない。手を嗅ぐと強烈な臭いで吐き気がする。目の前に、ハンドソープのボタンがあるので、それを使って臭いを中和させる。持っているものを確認すると、折りたたみ式の定規とガムを見つける。合体させて、スマートフォンに届く。しかし、パスワード認証が上手くいかず、1分間スマートフォンの操作ができなくなってしまう。不幸中の幸いにより、アイテムは次々と出てくるが、あと一歩のところで34分の制限時間の貴重な1分を消費する羽目になってしまう。このように、その状況における最善の道具が現れながらも、あと一歩のところで後退したり、進展したりする攻防により、失速することなく最後まで爆速で修羅場が激るのである。また、現実において制限時間はキリの良い数字ではない。目を覚ました時には修羅場だった状況を表現するための「制限時間34分」という設定の塩梅にも惹き込まれるものがあった。
一見すると、荒唐無稽なC級映画に見えるが、トイレ映画にハズレなし、侮るなかれ。理詰めで、口と鼻を塞ぎたくなるほどの緊迫感が楽しい一本であった。
3/3(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開!
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