Last Screening(2022)
監督:ダルジャン・オミルバエフ
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
昨年、東京国際映画祭で上映されたカザフスタンの巨匠ダルジャン・オミルバエフ作品『ある詩人』。本作は8年ぶりの新作である。なんと今年も新作を作っていた。タイトルは『Last Screening』だ。実際に観てみました。
『Last Screening』あらすじ
Notwithstanding the layman’s opinion, art and life are two different worlds, separated by an impassable abyss. Where there is life, there is no art, and vice versa. Young artists have to make that difficult choice, sometimes from a rather young age. Our film is probably about that, the uneasy fate of an artist who must be ready to bear the weight of loneliness. It is a terrible, but wonderful fate that no one can escape. What has always been, and always will be.
訳:素人の意見ですが、芸術と人生は、越えられない深淵を隔てた二つの異なる世界です。人生あっての芸術、その逆もまた然り。若いアーティストたちは、時にはかなり若いうちから、その難しい選択を迫られることがあります。私たちの映画は、孤独の重みに耐える覚悟が必要なアーティストの不安な運命について描いたものでしょう。それは誰も逃れることのできない、恐ろしい、しかし素晴らしい運命なのです。これまでもそうだったし、これからもそうだろう。
※Festival Scopeより引用
ダルジャン・オミルバエフ、映画を観るとは孤独と向き合うことだ
本作は「映画を観るとは孤独と向き合うことだ」という理論を裏付けるため、「観る」眼差しを並べていく作品である。母が「寝なさい」と言う。青年はInstagramを眺めている。この時間は孤独なものとなっている。彼は別の日に学校の授業を聞く。一方的である授業。人はいるが孤独な空間が広がっている。食堂で意中の女の子を見つめる。友だちと仲良くしている女の子。青年は独りだ。孤独である。バスに乗る。人々はスマホ画面を見ており、それぞれの孤独と向き合っている。
そんな彼が行き着く先は映画館。あまり観客のいない回だろう。青年がチケットを買った後、おじいさんが映画のチケットを買う。待合いの場所には人っ気がいない。掃除のおばちゃんがいるだけだ。席に着くと世界は広がっているが、孤独と対峙することになる。
最近、日本では少しずつYouTubeやTwitchを使った映画の同時視聴が文化として根付きつつあるが、それでも映画の本質はクリエイターの生み出す世界と自分が対峙する孤独な空間であろう。ダルジャン・オミルバエフ監督の鬱屈した感情が蠢く映画であった。
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