四月(1962)
April
監督:オタール・イオセリアーニ
出演:ギア・チラカーゼ、タニア・チャントゥリアetc
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
オタール・イオセリアーニDVD-BOXの作品をいい加減に観ていこうと思い、短めの『四月』を観た。『群盗、第七章』の時にも感じたが、オタール・イオセリアーニ監督はサイレント映画時代の運動への執着を呼び起こそうとする監督な気がする。『四月』は台詞を極端に抑えて、運動の快感に特化した作品であった。
『四月』あらすじ
街を歩く彼女(タニア・チャントゥリア)のあとを、追いかける彼(ギア・チラカーゼ)。時折視線を交わしながら、お互いをじらすように速度をはやめたり、遠回りしたり、かくれんぼしたり。二人は目と目を合わせるだけで心が通じあう仲のよいカップルだ。彼らは水道、電気、ガスがあるだけの殺風景なアパートの一室で新生活を始めた。ある日、管理人の男がやってきて、何も持たない二人のために椅子をプレゼントし、部屋に鍵をかけることを提案する。それをきっかけに、二人はいろんなものを部屋に持ちこみはじめる。テーブルを買い、それからベッド、テレビに鏡台…。部屋にものが増え、身なりがよくなっていくにつれドアにかける南京錠も増えていくが、それと反比例して、彼らが寄り添うためのスペースはどんどん失われていく。以前のように寄り添ったり、見つめあうことをしなくなった二人の心は徐々にすれ違う。ある日二人は、かつてのように街中を追いかけっこし、手をつなぎ見つめあって仲直りをする。アパートに帰ると、二人は部屋中を埋め尽くした家具や電化製品を次々と窓から放り投げるのだった。
オタール・イオセリアーニ流れる人の美しさ
広い空間からカメラを横に振り、小道が映ると、不気味に同じ服を着た人がたくさん現れ、奥へと吸い込まれていく。家具を持った者が目的地に向かってゾロゾロと行進し、扉や階段といった分岐に差し掛かると一部はそこへと吸い込まれていく。『カメラを持った男』を彷彿とさせる、社会システムの運動に従う人間が提示され、それに抗うような情緒的恋愛が紡がれる。男は、先回りして女と偶然的出会いをするように仕向ける。彼女もそれは理解しており、振り返り焦らす。そんな甘酸っぱい追う/追われるの関係を阻害する、重い荷物を持った男。嫌がらせのように男の進行を邪魔してくるのだ。
中盤以降は、がらんとした部屋に二人が入り、そこでモヤモヤが錬成されていく。突然水道から出てくる水、複数の窓を通じたそれぞれの人生の連動、妨害、小さい男の狭い空間をちょこまか動く様子をスパイスにして、あれだけ自由で開放的恋愛をしていたのにいつの間にか窮屈で居心地の悪い者へと変わってしまう。家具を外に投げ出すことにより停滞、倦怠へ脱する。このメタファーの使い方に痺れた。
狭い空間でもこれだけ面白い構図が撮れる。こういう技術こそ、YouTuberに継承されるといいなと思う。
ジョージア映画
・『群盗、第七章』負の連鎖をフィルムのように繋いで
・『金の糸』ジョージアの失われた時は受話器から求められる
・【東京フィルメックス】『見上げた空に何が見える?』ジョージア、瞳をとじて きみを描くよ
・『ダンサー そして私たちは踊った』ジョージアの旋律でフラッシュダンス
※MUBIより画像引用