The Frontier Experience(1975)
監督:Barbara Loden
出演:Barbara Loden,Roger Hoffman etc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2022/7/9(土)より公開の『WANDA/ワンダ』に併せてバーバラ・ローデンの短編映画『The Frontier Experience』を観ました。定住型の『ミークス・カットオフ』といった感じで、つまりケリー・ライカートに影響を与えたのではと思う作品でありました。
『The Frontier Experience』あらすじ
1869. A widow and her family struggle to eke out a living in the bleak and largely uninhabited Kansas plains.
訳:1869年、カンザス平原に住む未亡人とその家族は、ほとんど人が住んでいない荒涼とした土地で生計を立てるために奮闘している。
黄金の大地にて
本作は周囲に何もない黄金の大地における未亡人の生活を描いた作品。日記テイストになっており、短いエピソードが詰まった代物となっている。エピソード自体はそこまで面白くないのですが、『The Boy Who Liked Deer』に引き続き画が素晴らしい。『The Boy Who Liked Deer』が編集の映画であり、畳み掛けるように悪ガキの悪行を繋げていったものに対し、こちらは空間で魅せていく。例えば、空と地の境界を中央に設定した画において、人が牛に向かって走っていく。牛の後ろを抜けることで奥行きが生まれてくる。また、かけっこ大会のシーンでは、荒野に向かって人々が走っていき、目印代わりの人をぐるっと迂回する。集中線のような動線を築き上げ、そのスペクタクルを見る女性の眼差しをさりげなく挟む。『WANDA/ワンダ』や『The Frontier Experience』もそうだが、遠巻きに人を捉える場面も健在で、この圧巻の演出を観ると長編作品を1本しか撮らなかったのが悔やまれる作家だと思わざるえない。
恐らく、バーバラ・ローデンの空間感覚を引き継いだのはケリー・ライカートで、一貫してどこか孤独な人を捉え続けるスタンスも含めて継承されているんだろうなと感じた。『WANDA/ワンダ』を語る上で、『The Boy Who Liked Deer』や『The Frontier Experience』も観ておく必要がありました。さて、劇場で観たらどのように感じるのか楽しみだ。
※MUBIより画像引用