『熱海ブルース』風呂場を開けたらボーイ・ミーツ・ガール

熱海ブルース(1962)

監督:ドナルド・リチー
出演:ワダ・チエコ、スズキ・トモスケ

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の好きな作品にドナルド・リチー『熱海ブルース』がある。映画批評家であるドナルド・リチーが熱海を舞台に撮った作品とのこと。先日、アピチャッポン・ウィーラセタクンのお気に入り映画リストをnoteでまとめたので観てみることにした。

『熱海ブルース』あらすじ

A young man and a woman meet in the bath of a resort in Atami one evening. The young man then attempts to swoon the woman while in the meantime enjoying the city sights of the vacation town, all accompanied by a sensual jazz score.
訳:ある晩、熱海の保養所の風呂で出会った若い男と女。青年は女を口説き落とし、その間に別荘地の街並みを楽しむ。官能的なジャズの調べに乗せて。

※IMDbより引用

風呂場を開けたらボーイ・ミーツ・ガール

熱海でバカンス中の女性。風呂に浸かっていると、そこに男が真っ裸で入ってくる。ギョッとする女。男は気まずそうに戻るが、彼女のことが忘れられず、また風呂場に戻ってくる。もう、そこに彼女はいなかった。彼女は外にいた。情事のチャンスだと勘違いした彼は、任侠映画のような古風な傘を持ちながらにじり寄る。女は察知して逃げていく。本作は、気持ち悪い男と弄ぶ女のユニークな運動をセリフなしで描いていく。

男が近づき、風になびく女の髪を食べようとする。そんな中、女の持ち物が飛ばされてしまう。それを取りに行くのだが、ひょいっと乗り越えていった先が怪我するレベルの高い塀となっており、そこに映画的ハッタリを感じさせる。木の下をくぐったり、小津安二郎ばりに、和室の空間によって画を分割し、被写体をフレームに押し込んでいく。この動と静のコントラストに興奮した。

映画批評家だけあって理論に裏打ちされた空間造形を満喫できるバカンス映画であった。

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