『アトミック・ブロンド』タルコフスキーが流れる劇場で激しく揉み合い

アトミック・ブロンド(2017)
Atomic Blonde

監督:デビッド・リーチ
出演:シャーリーズ・セロン、ジェームズ・マカヴォイ、ソフィア・ブテラ、ビル・スカルスガルドetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、とある配信で『アトミック・ブロンド』の長回しが凄いと紹介されており観てみた。監督は『ブレット・トレイン』、『デッドプール2』とダイナミックで時に泥臭い肉弾戦を繰り広げるイメージが強いデビッド・リーチ。確かに凄まじいアクションシーンの連続であった。

『アトミック・ブロンド』あらすじ

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」や「ワイルド・スピード ICE BREAK」など近年はアクション映画でも活躍の幅を広げているシャーリーズ・セロンが、MI6の女スパイを演じた主演作。アントニー・ジョンソンによる人気グラフィックノベルを映画化したアクションスリラーで、「ジョン・ウィック」シリーズのプロデューサーや「デッドプール」続編の監督も務めるデビッド・リーチがメガホンをとった。冷戦末期、ベルリンの壁崩壊直前の1989年。西側に極秘情報を流そうとしていたMI6の捜査官が殺され、最高機密の極秘リストが紛失してしまう。リストの奪還と、裏切り者の二重スパイを見つけ出すよう命じられたMI6の諜報員ロレーン・ブロートンは、各国のスパイを相手にリストをめぐる争奪戦を繰り広げる。共演に「X-MEN」「ウォンテッド」のジェームズ・マカボイ、「キングスマン」「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」のソフィア・ブテラ。

映画.comより引用

スパイの世界は狡猾な泥沼だ。

男は逃げる。しかし、追っ手は見えない。扉をよじのぼり、わずかな隙間をくぐり抜け、逃げ切ったかと思うと横からズドン。車が追突する。サスペンス映画でありがちなシーンであるが、映画は丁寧に殺しを描く。男は車と車に挟まれるが、一旦バックする。彼から死ぬ前の一言を聞いてから射殺する。「最高のスパイに殺されるならまだしも、お前に殺されるとは」と悔いのある一言と共に死ぬ。ちゃっかり腕時計をせしめて、敵は彼を川に落とす。クズでゲスなスパイだということが強調される場面だ。カメラは本作の主人公、ロレーン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)へと移る。彼女はミーティングで、この男の話を聞く。腕時計に重要な情報があるとのこと。つまり、例のクズスパイは単に金目のものをせしめたのではない、ミッションをこなす凄腕スパイだということが分かるのだ。このさりげないプロットに惹かれる。

映画は中盤に大技の長回しアクションを展開する。護衛ミッションで、ロレーンは群衆テクニックを使うが、銃撃戦の火蓋が切られてしまう。標的のいる建物へと潜入し、エレベーターに乗る。そしてダンジョンのように一階、一階降りていきながら戦闘を行うのだが、ここではアクションが物語る。例えば、敵の落とした長めの銃を拾う場面がある。負傷しているので、なかなか銃が組み立てられないし、部品が足りないように見える。彼女は銃の組み立てを諦め、鈍器として扱う。そして颯爽と敵から銃を奪い、戦闘を続行する。扉スレスレから、通過する敵を射殺し、カメラが敵の方へと眼差しを向けている間に次の銃撃の準備を整える。このスタイリッシュな動線に痺れた。

また、なんといっても、タルコフスキーの『ストーカー』が上映されている映画館で、観客がゾーンに入っている中、激しく劇場内を動き回り、スクリーンまで破りながら戦闘を繰り広げる場面は馬鹿馬鹿しくも、私の心を鷲掴みにした。

仕事終わりのご褒美映画である。

※映画.comより画像引用

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