アイアン・プッシーの大冒険(2003)
英題:The Adventure of Iron Pussy
原題:หัวใจทรนง
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン、マイケル・シャオワナーサイ
出演:シリヤゴーン・プッカウェート、マイケル・シャオワナーサイ
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
スペースで『MEMORIA メモリア』について語るため、アピチャッポン・ウィーラセタクン過去作を漁っていたら、彼にもエクスプロイテーション映画を撮っていた時代があったことを知った。女装スパイが大活躍する作品ということで観てみました。
『アイアン・プッシーの大冒険』あらすじ
「ブンミおじさんの森」で知られるタイの映画監督で芸術家のアピチャッポン・ウィーラセタクンが、フィラデルフィア生まれの現代芸術アーティスト、マイケル・シャオワナーサイとの共同監督で手がけた西部劇ミュージカル。シャオワナーサイ自らが演じる女スパイのアイアン・プッシーが、怪しい富豪の屋敷にメイドとして潜入し、大騒動を巻き起こす様を描く。2016年、アピチャッポン・ウィーラセタクンの特集上映「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016アンコール!」で上映。
アピチャッポン式エクスプロイテーション映画
食堂にチンピラが入ってくる。店員を脅し、ふんぞり返りながら席につく。店の奥から「はぁ〜い」と女性店員が現れる。彼らが目をつけない訳が無い。生意気なその女性を襲おうとする。そこへ、別の女性が現れ、チンピラを撃退し始めると店員の女性も加勢し、ことなきを得る。彼女は草むらに駆け寄ると、メガネをかけた高橋克実のような存在に変身する。そうです。彼女は女装していたのです。通常はセブンイレブンでバイトをしている冴えないおっさん。しかし、変身するとアイアン・プッシーとしてスパイ活動を行う。今回の任務もセブンイレブンのレジから受信する。
富豪の家にメイドとして潜入するのが今回の課題である。
本作は通俗なご当地エクスプロイテーション映画である。しかし、演出でキラリと光るものが少なくない。例えば、アイアン・プッシーが女装スパイに目覚める回想シーンがある。道を歩いていたら、女性がチンピラに囲まれ川に落とされそうになる。そこへ、女装した人物が現れ、「成敗してやる!」と圧をかける。彼女がものを投げつけるのだが、うっかり救うはずの女性に当たってしまってテヘペロするギャグシーンがあるのだが、それをサイレント映画のフォーマットで撮っており、アクションで物語を紡いでいるのだ。これは非常に良い。
また、バトルも泥臭いものであり、靴を投げつけるが当たらないところなどから必死さを強調している。
一方で、ミュージカルシーンは物語を停滞させている印象が強かった。しかし、アピチャッポン映画に頻繁に挿入されるポップな音楽の原点を知ることができて興味深いものがありました。
タランティーノ映画好きには刺さる作品だと思います。
アピチャッポン・ウィーラセタクン映画関連記事
・<考察>『MEMORIA メモリア』オールタイムベスト級の体験を紐解く
・『永遠に続く嵐の年』イグアナvsハトvs守備力3000のパナヒおかん…うわ、前からクソパワポが!!
・【ネタバレ解説】「光りの墓」アピチャッポン監督に質問してみた
・“Ç”【解説】「光りの墓」公開記念アピチャッポン幻の作品日本上陸「世紀の光」
※映画.comより画像引用