【アカデミー賞】『The Long Goodbye』リリックは痛みから生まれる

The Long Goodbye(2020)

監督:Aneil Karia
出演:リズ・アーメッド、ハシナ・ラジャ、Javed Hashmi、スダ・ブシャール、リッシュ・シャーetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第94回アカデミー賞短編映画賞にリズ・アーメッド主演作『The Long Goodbye』がノミネートされた。本作はリズ・アーメッドの同名音楽アルバムのために作られた作品である。実際に観てみると骨太な作品であり、他の作品は未観であるが、恐らく本作が受賞するだろうと感じた。

『The Long Goodbye』あらすじ

Riz and his family are in the middle of a typical family day in their house, whilst a far right march plays out on the telly in the background, which eventually arrives at their front door, leading to a devastating outcome.
訳:リズと彼の家族は、自宅で典型的な家族の一日を過ごしていたが、背景のテレビでは極右の行進が放映され、やがて玄関に到着し、壊滅的な結末を迎える。

MUBIより引用

リリックは痛みから生まれる

家族の混沌とした部屋が映し出される。狭い部屋に所狭しと人が集まり、様々な声が縦横無尽に駆け回る。テレビでは、軍隊のようなものが活動しており不穏な空気が漂う。そうこうしていると、窓からテレビに映っていた極右団体が暴れ回っている。そして遂に、家が襲撃される。こうなると混沌としていた家族は一つのベクトルに合わさる。

「逃げる」だ。

一目散に逃げ回るが、無慈悲にも捕らえられ、家族が目の前で銃殺されていく。リズ・アーメッドの目線の先には警察がいる。しかし、警察は見て見ぬふりをしている。極右団体と結託しているのだ。

戦いが終わり、死が眼前に広がる世界で彼は歌詞を口ずさむ。

本作は、凄惨な事件の中でリリックが生まれる過程を描いている。リリックを痛みを押し殺すように、絞り出すように発していくリズ・アーメッドの演技が強烈であった。短編ならではの勢いと力強さを感じた作品であった。

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※MUBIより画像引用