三度目の、正直(2021)
監督:野原位
出演:川村りら、小林勝行、出村弘美、田辺泰信、謝花喜天、福永祥子、影吉紗都、三浦博之etc
評価:35点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第34回東京国際映画祭コンペティション部門に濱口竜介映画の脚本家・野原位監督作『三度目の、正直』が選出された。ようやくイメージフォーラムでも公開されたので観てきました。これが問題作であった。
『三度目の、正直』あらすじ
黒沢清監督の「スパイの妻」、濱口竜介監督の「ハッピーアワー」で共同脚本を務めた野原位の劇場監督デビュー作。パートナーの連れ子がカナダに留学し、寂しさを抱えていた月島春は公園で記憶を失くした青年と出会う。過去に流産の経験がある春は、青年を神からの贈り物だと信じ、青年を自身で育てたいと願う。一方、音楽活動を続けている春の弟・毅は、精神の不安を抱えながら、毅の創作を献身的に支える妻・美香子とともに4歳の子どもを育てていた。それぞれが抱える秘めた思いが、神戸の街を舞台に交錯する。「ハッピーアワー」でも舞台となった神戸で撮影され、「ハッピーアワー」でロカルノ国際映画祭の最優秀女優賞を受賞した川村りらが春役を演じた。神戸出身のラッパー・小林勝行が俳優に初挑戦した。
歌詞を見ながら歌うラッパー
事実婚の関係である夫婦。娘が留学し、妻・春は喪失感を抱いていた。そんな中、記憶を失った青年と出会い彼を息子のように扱う。生人と名前をつけて自宅で匿うことに、夫や母はドン引きする。その横で、ラッパーの活動を支える女性の物語が展開する。本作は、妻にも母にもなれない女性の精神不安をフィクション的不道徳で描いた異色作だ。再婚をしたが、実際に籍を入れずあくまでパートナーとして長年過ごしてきて、娘を留学に送り出す設定からして異様だ。またラッパーが、歌詞を見ながら練習するのはまだしも、ライブでも歌詞を見ながら練習する様子に驚かされる。サンドウィッチマンの演歌ネタだろうか?
映画はフィクションを通じて人間の内面を描く特性がある。人間の本質を掴むため異様なキャラクター設定することもある。濱口竜介は『寝ても覚めても』で、外見が先か内面が先かといった深淵なる物語を、瓜二つの別人を愛する内容から紡ごうとした。ただ、この手のフィクションは説得力が重要だ。『寝ても覚めても』では瓜二つの別人を愛することに対する葛藤があったからこそ物語に没入できた。
『三度目の、正直』は異様さが配置されているだけに留まっている。何故、歌詞を読むラッパーがいるのか?何故夫婦は籍を入れなかったのかがイマイチ伝わってこない。妻にも母にもなれない女性を描くための要素として配置されているだけに見えてしまうのだ。また、ラッパー・小林勝行の演技があまり良くなく、車の中でラップをしながら想いをぶつけ合おうとする場面があまりにも恥ずかしくて劇場を出ようかと悩んだ。
野原位監督デビュー作はホームランというわけにはいかなかった。
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※映画.comより画像引用