【中央アジア今昔映画祭】『海を待ちながら』バフティヤル・フドイナザーロフ移動映画の集大成

海を待ちながら(2012)
原題:V ozhidanii morya
英題:Waiting for the Sea

監督:バフティヤル・フドイナザーロフ
出演:ユゴール・ベロエフ、アナスタシア・ミクルチナ、デトレフ・バック、パヴェル・プリルチニー、ドニムハメド・アヒモフetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

中央アジア今昔映画祭でVHS時代の人気タジキスタン映画監督バフティヤル・フドイナザーロフ遺作『海を待ちながら』が上映されました。ユーロスペースで観てきたのですが、バフティヤル・フドイナザーロフ監督集大成となっていました。

『海を待ちながら』あらすじ

船長のマラットはアラル海を航海中に大嵐に遭遇し、妻や仲間を失い、一人生き残った。心に傷を負った彼はある決意を胸に、今では干上がってしまった海に戻り、荒野に佇む自分の船と対面する。そして船を引きずって水のない海を横断する無謀な旅に出る。贖罪を求め彷徨うマラットはどこに行き着くのか。

※中央アジア今昔映画祭サイトより引用

バフティヤル・フドイナザーロフ移動映画の集大成

バフティヤル・フドイナザーロフ監督といえば、移動がテーマになることが多い。長編デビュー作『少年、機関車に乗る』では、兄弟が親のいる場所を目指して機関車に乗る物語であり、機関車に対する人々の眼差しを捉えていた。『コシュ・バ・コシュ/恋はロープウェイに乗って』ではロープウェイを使った恋愛描写が特徴的となっていた。金属の塊である乗り物の移動に執着しているであろうバフティヤル・フドイナザーロフ監督は、荒野に鎮座する船を人力で海に運ぶ話となっている。航海中に嵐に遭い、たった一人生き残った者。町からは疎まれており、負の象徴ともいえる船に向かって石が投げられたりしている。彼は船を海まで運ぼうとする。船の上の特殊な機構を動かして、少しずつ荒野を移動する船。時にはラクダやエンジン、トラックに頼りながら過去を成仏するように進んでいく。

だだっ広い荒野、バーニングマンのような世界観の中で、動くはずのない朽ちた船を一生懸命動かす。バフティヤル・フドイナザーロフの動作に対する好奇心の執念が圧倒的な移動の物語を魅せている。それ故に、物語は停滞し、船の移動と停止が波打つように2時間流れ、時たま睡魔が押し寄せるものの、時間に追われぬ者の豊穣な時の間に魅了されました。

ユーロスペースのバフティヤル・フドイナザーロフ監督回はかなり人が入っていたので、ひょっとすると『コシュ・バ・コシュ/恋はロープウェイに乗って』デジタルリマスター版なんかを上映したら大盛況になるんじゃないでしょうか。

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※IMDbより画像引用

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